『第3次サウスフォレスト会戦』

進軍

大小様々な機竜がサウスフォレストに向けて飛行している。

伝説の生き物である竜を機械の身体に押し込めたものから、実在する戦闘機のようなものまで様々だ。

田辺の駆るブラックアウトもその中にいた。

「多国籍軍にもほどがある」

「共通の目標が出来たのだ」

「心強い話ではあるな」

つい、先日まで敵対していたギルドまでがこの戦いに参加している。

敵は正体不明の大型ロボット、街の1つや2つたやすく消し飛ばせる能力を持っている。

しかも、敵は周囲のエーテルを操れる。

それは攻撃だけでなく、ガーゴイルやドラゴンなど本能的にエーテルを使う生物の操作も可能だった。

その情報が広まった結果が現状だった。

運営に報告をした者もいるが、プレイヤー間のいざこざは自力で解決するようにとテンプレートのメールが帰ってきただけだった。

そうなってくると、頼りになるのは自分たちだけだ。

『敵の第1波接近中。ガーゴイルとドラゴンの構成。迎撃部隊はF10th~F15th』

何処のギルドにいるかわからないオペレータが告げる。

迎撃にあたる部隊の機竜が一斉に加速を開始。

白い雲を引きながら、前方に消えていく。

「F11thが交戦を開始した」

「俺らもそろそろか」

「操作系の切り替えを提案」

「了解」

そう言って、田辺は呼吸を整え、目を閉じた。

『聞こえるか?』

『聞こえる。こっちの声は聞こえるか?』

『聞こえる。問題ない』

『これが感覚共有か』

『正確には感覚共有を応用した同調型の操縦系だ』

『互いの感覚がそのまま、伝わる、か』

『動作にかかる時間が大幅に短縮できる』

『ふむ』

『田辺、目を開け』

『……ブラックアウトの視界か』

コクピットから見た光景ではなく、ブラックアウトのカメラから見た光景だ。

ブラックアウトのカメラは機首に備え付けられている。

一瞬、身体だけで空を飛んでいる感覚にとらわれる。

『これがお前の感覚か』

『そうだ』

『良い景色だ。これなら、何だって出来そうだ』

『最初からこのシステムは搭載してあった』

『使わなかった理由は何となくわかる』

『このシステムの条件は互いの存在を認め、受け入れることだ。異なる存在の身体の境界を消すシステムだ』

『なるほどな』

『敵第3波確認』

『劣化機竜隊か。趣味が悪い』

『田辺、行くぞ』

『了解』

ブラックアウトが今までに無い加速を開始、遅れるように他の機竜が続く。

撃破

『大型ミサイル命中まで残120秒』

『何でもいい。道を切り開くんだっ』

機竜残存率8割』

『後ろに食いつかれたっ』

『待て、俺が落とすっ』

ブラックアウトの後方にミサイルが5発食いついた。

すぐさま、擬似熱源を放出。

ミサイルのターゲットが擬似熱源に移り、ブラックアウトから離れる。

ミサイル、爆発。

周囲の機竜も降り注ぐミサイル群を回避しながら、敵の数を確実に減らしている。

『ミサイル着弾まで30秒、全部隊至急退避せよ』

『まだ、減らしきれてないぞっ』

『離脱に15秒あれば十分だ。粘れる奴はギリギリまで粘れ』

破損の酷い機竜とその護衛につく機竜が離脱する。

それでも多くの機竜はその場に残り、ミサイルを落とし、防壁となったガーゴイルとドラゴンを撃ち落す。

残り攻撃をする機竜の中にブラックアウトもあった。

『私たちは離脱に12秒あれば十分だ』

『とことん、ギリギリだな』

竜の砲撃を身体を傾けてかわし、

『だが、味方に落とされるつもりは無い』

竜の顔面にレーザーガンを浴びせる。

鱗と血と肉が飛び散る。

『そうだ』

さらにミサイルを撃ち込む。

竜が断末魔の叫びと身体を構成したものをぶちまける。

赤い飛沫を突き抜けて、ブラックアウトと機竜たちが敵の壁を削っていく。

『時間だ』

『離脱、最大速度』

2基のエンジンが青白い炎を吹き出す。

ブラックアウト、垂直上昇。

先に離脱を始めた機竜たちに並ぶ。

『着弾まで後、5、4、3、2、1―』

大型ミサイルは一瞬にして、内部に蓄積していたエーテルを膨大な熱と光に変換。

大きな光の半球となって敵の大型ロボットを飲み込んだ。