『まとめて爆破』

『なぁ、北側の防御がやたら弱いと思わないか?』

『弱いって言うか防御無いでしょう、これ』

『あの指揮官様のことだから、何か考えがあるんだろうな』

『とりあえず、俺らはこの前線を押し上げようか』

機竜隊の連中から。その防御薄いところ目がけて、敵の群れが来てるってよ』

タッチパネル型の端末にはチャットのログが流れている。

「好き勝手言ってるなあ」

岩陰に隠れながらヘゲル。

今のところ、防衛網を抜けてくる敵の姿は見あたらず、"彼女"の武器は一度も使われていない。

『作戦は一部にしか伝達してないもの』

個別チャットでメッセージを投げてくるのはスグリだ。

「そりゃな」

呆れ顔でヘゲルは空を見上げる。

「最も、信頼できる連中に任せてるから大丈夫か」

『彼女たちなら、絶対にやってくれるわ』

何処か笑みを含めながらスグリ。

『そろそろね』

「ああ」

ヘゲルは視線を北の方に向ける。

攻め込む敵の声が響く。

『かかってくれたわね』

彼女の声と同時、北の山岳地帯の形を変えるほどの爆発が発生した。