DAYS

「坂下さんは部活、何か考えてるの?」
カシスはノートから目を離して、声の主を見る。
クラスメイトの木下だ。
「特に考えてないわ」
「そうなんだ」
含みがある言い方だとカシスは思った。
「水泳好きなら、ぜひ、我が水泳部に!」
「水泳は好きだけど、部活は考えてしまうわ」
「えー、どうしてー。大会優勝だって夢じゃないのに」
好意的に見てもらえるのはありがたいが、人間同士が競い合って初めて成立する。
それにFSである自分が参加するのは、大会の趣旨を根底から覆してしまう。
カシスはやんわりと断ることに決めた。
「泳ぐのは好きだけど、競い合うのは好きじゃないのよ」
「水と戯れるのが好きな感じ?」
「そうね、そんな感じよ」
「じゃあ、しょうがない」
木下はありがとね、といって離れていく。
それと同時にいつの間に集中していた視線も消えていく。
「部活ね」
特に考えていなかった。