『見物』

「搭乗者が死んだから調子乗ってるのかね」

「この船の防衛圏内まで130秒ぐらいかしら」

 投影型のディスプレイには搭乗者を失って疾駆する試験機と追撃する防衛隊の攻防戦が映し出されていた。どれにも生身の人は乗っていない。試験機は空中戦特化のAIが制御し、防衛隊の機体はアンドロイドが操っている。

「まるで人事ね、二人とも」

「仮に防衛隊が全滅しても、X-1はシールドを突破できないからな」

 防衛隊の一機が二基あるエンジンのうち一基を破壊される。切り離されたエンジンは機体から離れたところで赤い花を咲かせる。

「この船が沈むようなことがあっても、私は構わないわ」

「あら、冷たいわね。そうなったら私は死ぬしかないわね」

「命こそ、人事のように言うわね」

「この船が沈むなんてありえない仮定だもの」

 命の言葉を証明するように防衛隊の一機がX-1の後ろをとり機銃を浴びせた。装甲どころか、内部構造ごと打ちぬかれたX-1は文字通り爆ぜた。

「見物は終了よ。作業に戻りましょ」