休憩場所

「随分と遠くまで来ましたね」

丘の上から見下ろす街並みは知らないものだ。

「短い時間で、かなり走ったようだ」

風になびく髪を押さえながら、アズはこたえた。

そんなアズの横に立って、アルギズは彼の体の心配をしていた。

「ん、そんなに疲れているように見えるかい?」

「いえ、そうは見えませんけど、ちょっと、心配してました」

「ありがとう。その辺のことも考えて、こうやって休憩しているんだよ」

その言葉にほっとしつつ、こういう冷静なところはいつまでも変わらない、とアルギズは思う。

長い間、一緒にいて随分と親しい仲にはなった、とは思うが、あったときから変わっていない。

ふと、親しくなったと思っているのは、自分だけなのだろうか、と疑問がわいた。

こればかりはどうやっても、外から知ることはできない。

「どうしたんだい?」

気づけば心配そうな顔をしてアズがこちらを見ていた。

「あの私……」

「……?」

「やっぱり、いいです」

「話したいことがあるなら、話しておいた方がいいと思うよ」

少し苦い笑いを浮かべて一呼吸。

「まぁ、無理しないと話せないなら、話さないのも手だね」

そういって、アズは視線を眼下の街並みに移した。

「ありがとうございます」

アルギズも視線を街並みに戻した。

アズの少し寂しそうな顔に気づかずに。