店員から差し出されたクレープを両手に持って、アズリエルはアルギズの姿を探す。
アルギズは正面の街路樹を囲うように設置してある木製のベンチに腰を下ろしていた。
クレープを落とさないよう少し慎重に歩く彼に気づくと軽く会釈した。
「お待たせ。君のはこれだね」
「はい。ありがとうございます」
クレープを受け取ったアルギズの横にアズリエルも腰を下ろした。
『いただきます』
二人同時に一口。
「本当、おいしいですね」
「それは良かった」
「一緒に食べるのは久しぶりでしょうか」
中のアイスに気を配りながら、
「3週間くらい前の打ち合わせ以来かな」
「では、久しぶりですね」
何処か楽しそうにアルギズは言った。
「次のドライバ更新はバグフィックスが中心になるそうだよ」
現地で改修されたイクサイスユニットを見て、
「なかなか、バグも取り切れないものですね」
「それでも最初の頃と比べたら、随分と穏やかになったと思う」
「そうですね」
「あと、もう一歩で完成だね」
「はい。……あ」
「ん?」
「頬にクリームが付いてますよ」
「何処?」
慌てて頬のあたりを空いている手で触れるアズリエル。
「此処ですよ」
そういうと、悪戯っぽい笑みを浮かべて、クリームを指でぬぐい取ってそのまま口に運んだ。
「……」
「ちょっと、行儀が悪かったですね」
「行儀が悪いのはクリームで汚してた僕だろう……」