『angel fall』 をテンプレートにして作成
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開始行:
[[DAYS]]
球形のコックピットの中に少女がいる。
コックピットの壁面はディスプレイで外の様子と機体の状態を...
前も後ろも右も左も上も下も宇宙の黒と恒星の白が映っていた。
数分前までは。
今は星々の間に別の光が浮かんでいた。
その光を覆うように丸い形をしたマーカーがついている。
マーカーの右横には種類、脅威度、距離が書いてあるが、マー...
「敵はさらに増加中」
男性の無機的な声が聞こえる。
操艦支援人工知能だ。
人ひとりでこの全長15㎞の宇宙戦艦を操るための人工知能。
この人工知能と付き合い始めた最初のころは、見ればわかるこ...
しかし、乱戦状態に陥ると見落としや思い込みが発生する以上...
そう思うようになってから、彼女は彼を、彼の正式名称アーク...
「アーレイ。応援が来るまであと、どれくらい?」
少女の左手は金色に光るアーチェリーをマーカーに向ける。
そして、矢を放つことをイメージする。
センサーが少女の思考を読み取り、アーレイが攻撃指示と解釈...
船体表面にあるレーザー砲群が一斉に光を放つ。
全砲門一斉射撃、40本の線が敵に向けて伸び、命中する。
「598秒だ」
「何とか持たせるしかないね」
少女は息を、深く吐いた。
現実とは非情だ、とは言うがこうも非情とは思ってもいなかっ...
思いながらもアーチェリーをマーカーに向けては攻撃をイメー...
援護がくるまでここを自分一人で持たせるしかない。
でも、それがどうかしたの、とも誰かが囁く。
いつもやってきたことでしょう、とその誰かが続ける。
そうやってここまで来たのだからこれから先もいくだけの話で...
そうね、と少女は心の中で頷いた。
「アーレイ、埒が明かないわ。リライターのレベルを引き上げ...
「アンジェリン、それでは君の心が持たない。許可できない」
「死ぬよりはずっといいわ。お願い」
アーレイの心配はよく理解している。
リライターは人の願いを現実世界に反映させるのを手伝う装置...
もともと、人には自分の願いを形にする力が備わっているのだ...
人が生きているのは、生きたいと願うから。
人が体を動かせるのは、体を動かしたいと思うから。
大なり小なり願えば形になり、願わなくなければ消えていく。
かつて人はこのことをよく理解して活用していたという。
それが魔法や魔術と呼ばれる奇跡だったがひとつの問題があっ...
生きたいと願わなくなっていうこと。
やりたいことをすべてかなえられたとしたら、人は満足してそ...
体は動いたとしても心が死んでしまう。
やがて、魔法や魔術は強い願いを必要としない科学に置き換え...
リライターにも同じ問題があるため、装置そのものにリミッタ...
心が死んでしまっては意味がないが、肉体ごと死んでしまって...
「……了解した。リライター、レベル5に設定する」
「ありがとう、アーレイ」
彼女の足元に肩幅ほどの大きさの光の円が見えた。
円の内側には幾何学模様が刻まれている。
「魔法陣、拡大開始」
その言葉と同時に魔法陣の直径が爆発的に拡大した。
「魔法陣最大直径で展開完了。アンジェリン、準備はいいか」
「OK。いくよ、アーレイ」
同時に攻撃開始、レーザーと光子魚雷が軌跡を描きながら敵集...
先よりも威力は確実にあがっていた。
敵生物が持つバリアを貫通し、本体を破壊している。
これがリライターのレベル最大の力と驚く反面、驚くことだろ...
リライターの反動よ、と理性が告げる。
だから、どうしたの、と感情が告げる。
感情が、心が冷たく固まっていくのを感じながら彼女は攻撃を...
攻撃のたびにざくりざくりと何かがそぎ落とされていく感覚に...
「あと、何秒?」
「123秒だ。頼む、耐えてくれ」
「そう」
アーレイが疑問の声をあげた。
「敵が後退していく」
敵の生物には数が減ったところで後退するような知性はないと...
「右舷から高速接近中の物体、回避を」
アーレイの警告を無視してアンジェリンは防御バリアの出力を...
次の瞬間、バリアにそれが激突した。
「警告、バリア発生機関の温度が急上昇――戦闘限界温度突破、...
右手の先を見れば敵生物の口のようなものが広がっている。
バリアに牙を立てているらしかった。
「回避したら母船がやられてしまうわ」
「しかし」
死んでしまっては元も子もない、と続けそう、と思いながらア...
「アーレイ、バリアを貫通して攻撃はできないよね」
「原理上、不可能だ」
「縮退炉を暴走させて人工ブラックホールを作るのはできるよ...
「原理上、可能だ」
その言葉には確かに躊躇いが感じられた。
申し訳ないと思いながらアンジェリンは、
「なら、それで」
「敵と差し違えるつもりなのか」
「このままだとバリアが砕けると同時に船体ごと砕かれて死ぬ...
「……すまない」
アーレイの言葉にアンジェリンは意外だと思った。
「謝るのは私のほう。あなたを傷つけるような戦い方はしない...
「兵器は砕き砕かれるために存在するものだ」
縮退炉の制御系に異常を示すアラートが表示され、コックピッ...
続いて縮退炉崩壊までの時間が現れた。
残り10秒。
「しかし、人は、君は、違う」
「そういってもらえるだけでも嬉しい。どこにも居場所はなか...
死が目の前に迫っていても怖くはなかった。
生きることへの執着が失われつつあるから、ではなく、信頼で...
アンジェリンは深く息を吸って吐いた。
そして、微笑んで、
「ありがとう」
「役割を果たせて光栄だ」
カウンタがゼロになった。
終了行:
[[DAYS]]
球形のコックピットの中に少女がいる。
コックピットの壁面はディスプレイで外の様子と機体の状態を...
前も後ろも右も左も上も下も宇宙の黒と恒星の白が映っていた。
数分前までは。
今は星々の間に別の光が浮かんでいた。
その光を覆うように丸い形をしたマーカーがついている。
マーカーの右横には種類、脅威度、距離が書いてあるが、マー...
「敵はさらに増加中」
男性の無機的な声が聞こえる。
操艦支援人工知能だ。
人ひとりでこの全長15㎞の宇宙戦艦を操るための人工知能。
この人工知能と付き合い始めた最初のころは、見ればわかるこ...
しかし、乱戦状態に陥ると見落としや思い込みが発生する以上...
そう思うようになってから、彼女は彼を、彼の正式名称アーク...
「アーレイ。応援が来るまであと、どれくらい?」
少女の左手は金色に光るアーチェリーをマーカーに向ける。
そして、矢を放つことをイメージする。
センサーが少女の思考を読み取り、アーレイが攻撃指示と解釈...
船体表面にあるレーザー砲群が一斉に光を放つ。
全砲門一斉射撃、40本の線が敵に向けて伸び、命中する。
「598秒だ」
「何とか持たせるしかないね」
少女は息を、深く吐いた。
現実とは非情だ、とは言うがこうも非情とは思ってもいなかっ...
思いながらもアーチェリーをマーカーに向けては攻撃をイメー...
援護がくるまでここを自分一人で持たせるしかない。
でも、それがどうかしたの、とも誰かが囁く。
いつもやってきたことでしょう、とその誰かが続ける。
そうやってここまで来たのだからこれから先もいくだけの話で...
そうね、と少女は心の中で頷いた。
「アーレイ、埒が明かないわ。リライターのレベルを引き上げ...
「アンジェリン、それでは君の心が持たない。許可できない」
「死ぬよりはずっといいわ。お願い」
アーレイの心配はよく理解している。
リライターは人の願いを現実世界に反映させるのを手伝う装置...
もともと、人には自分の願いを形にする力が備わっているのだ...
人が生きているのは、生きたいと願うから。
人が体を動かせるのは、体を動かしたいと思うから。
大なり小なり願えば形になり、願わなくなければ消えていく。
かつて人はこのことをよく理解して活用していたという。
それが魔法や魔術と呼ばれる奇跡だったがひとつの問題があっ...
生きたいと願わなくなっていうこと。
やりたいことをすべてかなえられたとしたら、人は満足してそ...
体は動いたとしても心が死んでしまう。
やがて、魔法や魔術は強い願いを必要としない科学に置き換え...
リライターにも同じ問題があるため、装置そのものにリミッタ...
心が死んでしまっては意味がないが、肉体ごと死んでしまって...
「……了解した。リライター、レベル5に設定する」
「ありがとう、アーレイ」
彼女の足元に肩幅ほどの大きさの光の円が見えた。
円の内側には幾何学模様が刻まれている。
「魔法陣、拡大開始」
その言葉と同時に魔法陣の直径が爆発的に拡大した。
「魔法陣最大直径で展開完了。アンジェリン、準備はいいか」
「OK。いくよ、アーレイ」
同時に攻撃開始、レーザーと光子魚雷が軌跡を描きながら敵集...
先よりも威力は確実にあがっていた。
敵生物が持つバリアを貫通し、本体を破壊している。
これがリライターのレベル最大の力と驚く反面、驚くことだろ...
リライターの反動よ、と理性が告げる。
だから、どうしたの、と感情が告げる。
感情が、心が冷たく固まっていくのを感じながら彼女は攻撃を...
攻撃のたびにざくりざくりと何かがそぎ落とされていく感覚に...
「あと、何秒?」
「123秒だ。頼む、耐えてくれ」
「そう」
アーレイが疑問の声をあげた。
「敵が後退していく」
敵の生物には数が減ったところで後退するような知性はないと...
「右舷から高速接近中の物体、回避を」
アーレイの警告を無視してアンジェリンは防御バリアの出力を...
次の瞬間、バリアにそれが激突した。
「警告、バリア発生機関の温度が急上昇――戦闘限界温度突破、...
右手の先を見れば敵生物の口のようなものが広がっている。
バリアに牙を立てているらしかった。
「回避したら母船がやられてしまうわ」
「しかし」
死んでしまっては元も子もない、と続けそう、と思いながらア...
「アーレイ、バリアを貫通して攻撃はできないよね」
「原理上、不可能だ」
「縮退炉を暴走させて人工ブラックホールを作るのはできるよ...
「原理上、可能だ」
その言葉には確かに躊躇いが感じられた。
申し訳ないと思いながらアンジェリンは、
「なら、それで」
「敵と差し違えるつもりなのか」
「このままだとバリアが砕けると同時に船体ごと砕かれて死ぬ...
「……すまない」
アーレイの言葉にアンジェリンは意外だと思った。
「謝るのは私のほう。あなたを傷つけるような戦い方はしない...
「兵器は砕き砕かれるために存在するものだ」
縮退炉の制御系に異常を示すアラートが表示され、コックピッ...
続いて縮退炉崩壊までの時間が現れた。
残り10秒。
「しかし、人は、君は、違う」
「そういってもらえるだけでも嬉しい。どこにも居場所はなか...
死が目の前に迫っていても怖くはなかった。
生きることへの執着が失われつつあるから、ではなく、信頼で...
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そして、微笑んで、
「ありがとう」
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