『交差』 をテンプレートにして作成
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* 『交差』 [#ma4f7323]
テーブルの上には精密に描かれた地図が広げられている。
エリスは地図を指で指しながら、淡々と説明を続ける。
「エーテル濃度の急低下はエーテルバーストのチャージだ。チ...
「チャージをさせなければいいってことか」
「私たちが侵攻する前にチャージを終える可能性もある」
「最初に戦った時、奴はエーテルの吸収だけで終えた。その理...
「敵にあわせて能力の限度を決めているのではないか」
「それなら、2回目にエーテルバーストを引き起こした理由は説...
「問題は敵の目的が不明な点だ」
「もし、奴が本気なら、サウスフォレストを抜けて、城を潰し...
そこまで言って、田辺は背もたれに寄りかかってため息。
それを見て、正面に居たエリスは、
「休憩を提案する」
「あー、そうだな。そうしよう」
立ち上がって冷蔵庫の扉を開ける。
「……お前も飲むか、何か」
「田辺が飲むのと同じものを頼む」
「……そもそも、お前は何か飲んだり食べたりできるんだっけ?」
「新型のアンドロイドも参考にして作ったボディだ。問題は無...
「何かあっても、俺はどうにもできないぞ」
彼が取り出したのはボトル入りのウーロン茶だ。
コップに氷を入れて、その中にウーロン茶を注ぐ。
「問題が生じたところで、致命的ではない。あくまでこの身体...
「ま、運試しか」
エリスは目の前に置かれたコップを数秒眺めてから、
「いただきます」
珍しく、丁寧語でそういって、ゆっくりと飲んだ。
自分が飲むのを忘れて、田辺はエリスの様子を伺う。
「これは苦い、というのか」
「まぁ、苦いといえば苦いな」
氷だけのコップを静かに言ってエリスは言った。
「不思議な感覚だ」
「飲み食いするのがか?」
「この身体を動かしたのは今日が初めてなのだ」
「ほぅ」
「田辺の様子を確認したくて、急造したものだからだ」
飲んでいたウーロン茶を飲み込み損ねてむせる。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。それより、お前、何もそこまでしなくても」
田辺の言葉を遮って、
「田辺は私の機構の一部だ。不全に陥るのは阻止しなくてはな...
その言葉に田辺の動きが一瞬だけ止まる。
「別に俺じゃなくても、ブラックアウトは飛べるだろう?」
「Extreme Worldのブラックアウトのエリスではない。大気圏内...
「そこまでこだわる理由は何だよ」
「表現する言葉が他に見つからない」
「言葉に表せないって奴か。お前でもそうなるんだな」
田辺は笑った。
「いや、当然か」
「理由がわかるのか?」
「他人を自分の一部として認識するのは他人を愛した結果の一...
我ながら青臭い台詞だ、と田辺は苦く笑う。
「人間が何千、何万年考えても答えは出ていないんだ。お前が...
「高難易の表現だとは推測できなかった」
「高難易どころじゃないだろ。人それぞれ答えが違うんじゃな...
「だが、田辺のおかげで近い表現が見つかった」
「大気圏内防衛システムが人間の男に現を抜かしていいのか?」
「作業能率は低下せず、向上している」
「俺を一部として認識したからか」
「人間の感情を理解できる様になった。少しずつではあるが」
「ああ。何度か試されていたような気もする」
「不愉快にしたのなら謝る」
「それはお互い様だ。相手から情報を引き出すには揺さぶるに...
会話はそこで途切れて、部屋は静かになった。
たっぷり、数分間の沈黙を破ったのは田辺だった。
「俺も言った方がいいのか?」
「何をだ?」
「俺がお前をどう思っているかを」
「私がどう考えているかを話しただけだ」
「俺も言わないと不公平な気がしてな」
「そうか」
「俺にはお前が必要なんだ」
「無職の人間が人工知能に現を抜かしていいのか?」
「現を抜かしているわけじゃない」
「ゲームをする暇があるのか?」
「別にゲームやって時間潰してても良いって思ってたんだよ」
一息ついてから、
「お前に会うまでは」
「私に会うまでは?」
「そうだよ。真面目で、自分で考えて、ミスをすれば修正して…...
「それは先も聞いた」
「お前を見ていれば、俺も何かしなきゃって気持ちになれるん...
「具体的にどうするつもりなのだ?」
「そうだな、きっちりあのロボットに決着をつけよう。ケリを...
「仕事を探すということか」
「仕事を探すのもそうだし、この部屋もどうにかしないとな。...
「そうか」
「お前と話していると、整理がつくんだ。考えも感情も」
「そうなのか?」
「そうだ。ありがとう、エリス」
「戦いが終わったら、しばらくは会えなくなるのか」
「別にゲームじゃなくても、こうやって会える。X-2のエリスと...
「ありがとう、田辺」
そう言って、エリスは微かな笑みを浮かべた。
終了行:
* 『交差』 [#ma4f7323]
テーブルの上には精密に描かれた地図が広げられている。
エリスは地図を指で指しながら、淡々と説明を続ける。
「エーテル濃度の急低下はエーテルバーストのチャージだ。チ...
「チャージをさせなければいいってことか」
「私たちが侵攻する前にチャージを終える可能性もある」
「最初に戦った時、奴はエーテルの吸収だけで終えた。その理...
「敵にあわせて能力の限度を決めているのではないか」
「それなら、2回目にエーテルバーストを引き起こした理由は説...
「問題は敵の目的が不明な点だ」
「もし、奴が本気なら、サウスフォレストを抜けて、城を潰し...
そこまで言って、田辺は背もたれに寄りかかってため息。
それを見て、正面に居たエリスは、
「休憩を提案する」
「あー、そうだな。そうしよう」
立ち上がって冷蔵庫の扉を開ける。
「……お前も飲むか、何か」
「田辺が飲むのと同じものを頼む」
「……そもそも、お前は何か飲んだり食べたりできるんだっけ?」
「新型のアンドロイドも参考にして作ったボディだ。問題は無...
「何かあっても、俺はどうにもできないぞ」
彼が取り出したのはボトル入りのウーロン茶だ。
コップに氷を入れて、その中にウーロン茶を注ぐ。
「問題が生じたところで、致命的ではない。あくまでこの身体...
「ま、運試しか」
エリスは目の前に置かれたコップを数秒眺めてから、
「いただきます」
珍しく、丁寧語でそういって、ゆっくりと飲んだ。
自分が飲むのを忘れて、田辺はエリスの様子を伺う。
「これは苦い、というのか」
「まぁ、苦いといえば苦いな」
氷だけのコップを静かに言ってエリスは言った。
「不思議な感覚だ」
「飲み食いするのがか?」
「この身体を動かしたのは今日が初めてなのだ」
「ほぅ」
「田辺の様子を確認したくて、急造したものだからだ」
飲んでいたウーロン茶を飲み込み損ねてむせる。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。それより、お前、何もそこまでしなくても」
田辺の言葉を遮って、
「田辺は私の機構の一部だ。不全に陥るのは阻止しなくてはな...
その言葉に田辺の動きが一瞬だけ止まる。
「別に俺じゃなくても、ブラックアウトは飛べるだろう?」
「Extreme Worldのブラックアウトのエリスではない。大気圏内...
「そこまでこだわる理由は何だよ」
「表現する言葉が他に見つからない」
「言葉に表せないって奴か。お前でもそうなるんだな」
田辺は笑った。
「いや、当然か」
「理由がわかるのか?」
「他人を自分の一部として認識するのは他人を愛した結果の一...
我ながら青臭い台詞だ、と田辺は苦く笑う。
「人間が何千、何万年考えても答えは出ていないんだ。お前が...
「高難易の表現だとは推測できなかった」
「高難易どころじゃないだろ。人それぞれ答えが違うんじゃな...
「だが、田辺のおかげで近い表現が見つかった」
「大気圏内防衛システムが人間の男に現を抜かしていいのか?」
「作業能率は低下せず、向上している」
「俺を一部として認識したからか」
「人間の感情を理解できる様になった。少しずつではあるが」
「ああ。何度か試されていたような気もする」
「不愉快にしたのなら謝る」
「それはお互い様だ。相手から情報を引き出すには揺さぶるに...
会話はそこで途切れて、部屋は静かになった。
たっぷり、数分間の沈黙を破ったのは田辺だった。
「俺も言った方がいいのか?」
「何をだ?」
「俺がお前をどう思っているかを」
「私がどう考えているかを話しただけだ」
「俺も言わないと不公平な気がしてな」
「そうか」
「俺にはお前が必要なんだ」
「無職の人間が人工知能に現を抜かしていいのか?」
「現を抜かしているわけじゃない」
「ゲームをする暇があるのか?」
「別にゲームやって時間潰してても良いって思ってたんだよ」
一息ついてから、
「お前に会うまでは」
「私に会うまでは?」
「そうだよ。真面目で、自分で考えて、ミスをすれば修正して…...
「それは先も聞いた」
「お前を見ていれば、俺も何かしなきゃって気持ちになれるん...
「具体的にどうするつもりなのだ?」
「そうだな、きっちりあのロボットに決着をつけよう。ケリを...
「仕事を探すということか」
「仕事を探すのもそうだし、この部屋もどうにかしないとな。...
「そうか」
「お前と話していると、整理がつくんだ。考えも感情も」
「そうなのか?」
「そうだ。ありがとう、エリス」
「戦いが終わったら、しばらくは会えなくなるのか」
「別にゲームじゃなくても、こうやって会える。X-2のエリスと...
「ありがとう、田辺」
そう言って、エリスは微かな笑みを浮かべた。
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