『それはとても静かに【Strobe 1】』 をテンプレートにして作成
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* それはとても静かに【Strobe 1】 [#j38cc4c9]
●
恋に落ちる時は無音だった。
●
大学の帰り道、いつもの本屋に寄って、気になった小説を買...
「あそこの店員かわいいよなー。どっちが狙い?」
「本が狙いだ、馬鹿め」
本が狙いは嘘ではない。ただ、白い髪のお姉さんのほうだ、...
「4980円になります」
「5000円でお願いします」
「20円のお釣りです」
そのお姉さんがお釣りを渡してきたので受け取る。いつもの...
●
家まで歩きながら、自己分析を進める。別に就活のあれでは...
まず、バカ話で答えなかったのは、言葉にしたらもっと意識...
冷たい風が欲しくて、残りの道は全力疾走した。
●
シャワーを浴びても、ベッドの上に転がっても、気持ちは切...
待て待てこれが恋という奴なのか。いきなりすぎるだろ、い...
何だろう、読んではいけない気がした、から。今回は読まな...
読み終えたころには物語に情緒をかき回されていた。とどめ...
自分にとって恋愛は縁がないもので、するとしても何か段階...
そんなものは実際になくて、今、自分はまさに恋に落ちてい...
目を強くつむれば、あの笑顔と手のぬくもりと声とかすかな...
「五感総動員するなぁっ!」
叫びながら本と眼鏡をサイドテーブルにおいて、布団をかぶ...
何とか眠れたと思ったら、夢にもでてきた。
●
翌日、遅めの朝食を済ませて、駅からバスに揺られて大学に...
講義と講義の隙間時間、研究室のソファで転がっていると、
「上の空ですねー」
「そう見えるか」
「ほかにどう見える?」
奴が振り返ると、各々の席で調べごとやら何やらしていたメ...
『恋って奴ですか?』
「何でハモるんだよ!」
「瞳孔が開いている」
教授、どういう理屈ですか。いや、聞くと全部返ってくるに...
それ以上の追及はなかった。引き際が鮮やかすぎるんだよ、...
●
帰り道、どうやったらこの気持ちに整理がつくかを考えてい...
溜息をつくと窓ガラスが曇る。指先で拭ってやると、ゆった...
時計を見ると19時過ぎ。こうなると1時間ずれ込むのも珍しく...
●
駅前についたのは20時をちょうど回ったころだ。車内の淀ん...
運よく、近くのファストフード店が空いていた。注文をする...
ふと、右隣りを見ると、あのお姉さんが、いた。
●
「あら、奇遇ね。あなたも夕飯?」
まるで友達に話しかけてくるような調子だ。油が切れかかっ...
「もう少し話してもいいかしら?」
「よ、喜んで」
「いつも本を買ってくれてありがとう」
優しく微笑む横顔がまぶしい。食事すらあまりおいしく見え...
「こちらこそ、助かってます。発売日に自分の手で買えるので」
「ふふ、本屋冥利に尽きるわ」
「あの」
「何かしら?」
「また、会えますか。その、本屋以外で」
目を弧にして笑い、ハンドバッグから端末を取り出して、
「では、連絡先交換、しましょうか」
●
ベッドの上で転がりながら、端末で交換した連絡先を見てい...
意を決して、メッセンジャーアプリを起動、新規会話の作成...
"話せてよかった"
"これも何かの縁だと思う"
"これからもよろしく"
ありがとうございます、好き、と打ちそうになった自分を殴...
"こちらこそ、ありがとうございました"
"今後ともよろしくお願いします"
硬いメッセージになってしまった、と眉間に皺を寄せている...
●
ぎこちないメッセージを何往復かしている間に博物館に行く...
髭は入念に剃り、髪をヘアワックスで整え、手持ちで一番よ...
「お待たせしました」
「今さっき来たところよ」
「本当ですか?」
「ええ」
博物館に向かって並んで歩きだす。いつもの歩幅で歩いて大...
「ひとつ聞いてもいいかしら?」
「居酒屋でバイトしていたの?」
「してないですよ」
「ハンバーガー食べたときもさっきも、最初の言葉が居酒屋の...
首を横に振って、そんなことないですよ、と答える。
●
博物館巡りは展示の前で互いに疑問や知っていることを共有...
「また、来ましょう」
「ええ、ほかの場所も行ってみたいわ」
夕暮れの公園を二人で歩く。好きだと告げるにはまだはやい...
「――好きです」
「ありがとう――」
次の言葉は言わせない、聞きたくない。
「一緒にいて、満たされたことのない部分が、満たされたんで...
ああ、もっと、シンプルに言えないのか。しかし、口からは...
「もっと一緒にいたい、もっといろんなことをしたい、あなた...
なんて格好のつかない言葉だろう。でも、これが本心だ。
「あなたも同じことを考えてくれていたら――」
公園内の外灯に明かりがともる。光に照らされた彼女は笑顔...
「あなたってもっと、静かなヒトだと思っていたけど、情熱的...
彼女はこちらの右隣に立つと、顔をこちらに向けて、
「同じことを考えていたの。好きよ」
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* それはとても静かに【Strobe 1】 [#j38cc4c9]
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恋に落ちる時は無音だった。
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大学の帰り道、いつもの本屋に寄って、気になった小説を買...
「あそこの店員かわいいよなー。どっちが狙い?」
「本が狙いだ、馬鹿め」
本が狙いは嘘ではない。ただ、白い髪のお姉さんのほうだ、...
「4980円になります」
「5000円でお願いします」
「20円のお釣りです」
そのお姉さんがお釣りを渡してきたので受け取る。いつもの...
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家まで歩きながら、自己分析を進める。別に就活のあれでは...
まず、バカ話で答えなかったのは、言葉にしたらもっと意識...
冷たい風が欲しくて、残りの道は全力疾走した。
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シャワーを浴びても、ベッドの上に転がっても、気持ちは切...
待て待てこれが恋という奴なのか。いきなりすぎるだろ、い...
何だろう、読んではいけない気がした、から。今回は読まな...
読み終えたころには物語に情緒をかき回されていた。とどめ...
自分にとって恋愛は縁がないもので、するとしても何か段階...
そんなものは実際になくて、今、自分はまさに恋に落ちてい...
目を強くつむれば、あの笑顔と手のぬくもりと声とかすかな...
「五感総動員するなぁっ!」
叫びながら本と眼鏡をサイドテーブルにおいて、布団をかぶ...
何とか眠れたと思ったら、夢にもでてきた。
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翌日、遅めの朝食を済ませて、駅からバスに揺られて大学に...
講義と講義の隙間時間、研究室のソファで転がっていると、
「上の空ですねー」
「そう見えるか」
「ほかにどう見える?」
奴が振り返ると、各々の席で調べごとやら何やらしていたメ...
『恋って奴ですか?』
「何でハモるんだよ!」
「瞳孔が開いている」
教授、どういう理屈ですか。いや、聞くと全部返ってくるに...
それ以上の追及はなかった。引き際が鮮やかすぎるんだよ、...
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帰り道、どうやったらこの気持ちに整理がつくかを考えてい...
溜息をつくと窓ガラスが曇る。指先で拭ってやると、ゆった...
時計を見ると19時過ぎ。こうなると1時間ずれ込むのも珍しく...
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駅前についたのは20時をちょうど回ったころだ。車内の淀ん...
運よく、近くのファストフード店が空いていた。注文をする...
ふと、右隣りを見ると、あのお姉さんが、いた。
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「あら、奇遇ね。あなたも夕飯?」
まるで友達に話しかけてくるような調子だ。油が切れかかっ...
「もう少し話してもいいかしら?」
「よ、喜んで」
「いつも本を買ってくれてありがとう」
優しく微笑む横顔がまぶしい。食事すらあまりおいしく見え...
「こちらこそ、助かってます。発売日に自分の手で買えるので」
「ふふ、本屋冥利に尽きるわ」
「あの」
「何かしら?」
「また、会えますか。その、本屋以外で」
目を弧にして笑い、ハンドバッグから端末を取り出して、
「では、連絡先交換、しましょうか」
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ベッドの上で転がりながら、端末で交換した連絡先を見てい...
意を決して、メッセンジャーアプリを起動、新規会話の作成...
"話せてよかった"
"これも何かの縁だと思う"
"これからもよろしく"
ありがとうございます、好き、と打ちそうになった自分を殴...
"こちらこそ、ありがとうございました"
"今後ともよろしくお願いします"
硬いメッセージになってしまった、と眉間に皺を寄せている...
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ぎこちないメッセージを何往復かしている間に博物館に行く...
髭は入念に剃り、髪をヘアワックスで整え、手持ちで一番よ...
「お待たせしました」
「今さっき来たところよ」
「本当ですか?」
「ええ」
博物館に向かって並んで歩きだす。いつもの歩幅で歩いて大...
「ひとつ聞いてもいいかしら?」
「居酒屋でバイトしていたの?」
「してないですよ」
「ハンバーガー食べたときもさっきも、最初の言葉が居酒屋の...
首を横に振って、そんなことないですよ、と答える。
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博物館巡りは展示の前で互いに疑問や知っていることを共有...
「また、来ましょう」
「ええ、ほかの場所も行ってみたいわ」
夕暮れの公園を二人で歩く。好きだと告げるにはまだはやい...
「――好きです」
「ありがとう――」
次の言葉は言わせない、聞きたくない。
「一緒にいて、満たされたことのない部分が、満たされたんで...
ああ、もっと、シンプルに言えないのか。しかし、口からは...
「もっと一緒にいたい、もっといろんなことをしたい、あなた...
なんて格好のつかない言葉だろう。でも、これが本心だ。
「あなたも同じことを考えてくれていたら――」
公園内の外灯に明かりがともる。光に照らされた彼女は笑顔...
「あなたってもっと、静かなヒトだと思っていたけど、情熱的...
彼女はこちらの右隣に立つと、顔をこちらに向けて、
「同じことを考えていたの。好きよ」
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