#author("2018-06-02T22:16:00+09:00","default:sesuna","sesuna")
[[DAYS]]

カメラで外の様子を伺うと、シアーはタコ足を広げて波に揺られていた。
いつ呼びもどそうかと、誠司は考えていたが問題が起きるまでは何もしなくて良い、という結論に至った。
ヘッドセットでシアーに話しかけると、
「ここの海も気持ちいいよ」
と返ってきた。
海ができてから1世紀経つかどうかだと言うのに面白いものだ。
生態系も急速に発展しつつある。
だからこそ、潜水艇が潜り調査をし、バックアップに誠司とシアーがいる。
何もないなら海水浴に来たようなものだ。
こちらの潜水艇の動作確認は済んでいる。
他の星の海でもいつも通りの仕事ができる。
誠司にはその確信があった。
シアーに聞けばそう言う予感がする、と返ってくるだろう、と考えているとアラートが鳴った。
「こちら、海洋大学所属シークローラー、船体に異常が」
ぶつ、と通信とテレメトリが途切れた。
クリティカルな問題が起きたに違いなかった。
シアーを呼ぶと声は上から降ってきた。
すでにパイロットスーツに身を包んでいる。
「船体が破壊された可能性がある。急いで潜るぞ」
「うん」
バックシートに座るとシアーは、てきぱきとパネルを操作し、情報収集をはじめる。
「最後に通信してきた場所はここ。水深1万4300メートル……?」
「潜れるさ。俺たちなら」
「うん。いつも通り、ね」
「そういうことだ。ディープブルー、ベルト着用」
制御コンピュータが2人の体をベルトで固定する。
密閉されたことを確認すると、誠司は宣言する
「垂直に降下する。行くぞ」
流線型の美しい船体が青い海に消えて行く。
彼らは知らない。
海底に何がいるかも。
それが何を求めているかも。
深海の長い一日がはじまろうとしていた。