DAYS

肩に重みが、と左肩を見ると、カシスが身体を預けるように寄りかかっていた。目をぱちくりさせていると、彼女の銀色に輝く髪がさらさらと流れ、こちらの肩にかかった。
「この先の映画、知ってるの?」
耳に吐息がかかりそうな距離から彼女の声が聞こえる。
声が上ずらないよう注意しながら、知らないと答えた。
画面の中でも恋人同士が似たような姿勢で、じゃれあっていた。
「でも、ホラーだったよね、これ」
というと、画面の中の女性が突然、暴れ始めた。男は女を突き飛ばす。
テーブルの上に置いてある拳銃を握ると、迷わずに引き金をひく。
暴れだした女は、胸から青い血を流しながら床に倒れていた。
動く気配はない。
「……唐突にひどいなぁ」
感想を漏らしていると左側からの圧力が強まった。
声をかけるよりもはやく、カシスは動き、僕は態勢を崩した。
両腕は彼女に掴まれ、まるで押し倒されたかのような。
「私のこと、撃ってみる?」
「まさか」
正体もわかっているのだから、怖がることはない。
だから、僕は掴まれている手を引いて、彼女をより近くに、と引き寄せる。
身体に覆いかぶさるような形になって、彼女ははじめて顔を赤らめた。
「ちょっと、大人げなかったかしら?」
「いいスパイスだったよ」
彼女の唇にそっと唇を重ねてやる。
「銃弾よりはこ――」
せりふは最後までいわせなかった。