[[DAYS]]

*『復讐_A』 [#a06da339]

「追い詰めたぞ、FS!」
映画にありがちなセリフね、とFSと呼ばれた少女は灰色の壁を見上げる。
これまたお約束の行き止まりだ。
「追いかけっこはおしまいだ」
声の主はジーンズに黒のシャツに身を包んだ男だ。
年齢は30ぐらいだろうか。
どんな理由で復讐しているのかしら、と少女は考えるが候補がありすぎた。
諦めてゆっくり振り返れば、男が立っている。
格好だけ見れば普通だが手には自動小銃が握られていた。
両の手でしっかりとホールドし、こちらの胸あたりを狙っている。
視線を銃口から男の顔へ。
「復讐でしょう?」
「わかっているならなぜ逃げた」
怒りを押し殺した男の声。
「あっさり殺されて復讐した気分になれるの?」
銃声。
右の膝のあたりに衝撃が走り、膝から下の感覚が断ち切られる。
少女は受身もせずに後ろに倒れた。
痛みは、ない。
しばらく、狭い空をみあげていると男がゆっくりと近づく足音。
足音に混じって聞こえる金属音は再装填した音だ。
ややあって、男が少女の視界に姿を表した。
「疲れた顔ね」
「お前のせいだ」
そう、と少女が言うよりも早く銃口が火を吹いた。
装填されていた16発の弾丸が2秒の間に連続発射される。
男は撃つ時、頭から胸に向けて銃を動かしたので、少女の頭から胸にかけて命中した。
銃弾は少女の体の中をねじ切るように動き、破壊の限りをつくして体内に留まった。
「……」
そして、男は銃を投げ捨てると大股で歩きだした。
まるで逃げるように。