DAYS

人待ち

エイダ・スノウは駅で人を待っていた。
人を待つのは嫌いではなかった。
約束の時間より少し早めについて、道行く人をただ眺めているのが好きだからだ。
時間が迫っているのか急ぐ人。
休日なのかゆっくり歩いている人。
楽しそうに電話で話している人もいれば、なにやら険しい表情で電話をしながら歩く人もいる。
いろんな人、人、人、人……。
「来ない……」
時間になっても会うはずの相手は姿を見せない。
上着のポケットに入れておいた携帯電話が振動する。
今、駅についた、という連絡だろうか、と淡く期待しながらエイダは通話ボタンを押した。
「ごめん、遅れるー」
スピーカーから聞こえるのは脳天気な詫びの声だ。
「わかった。近くのカフェで待ってるから」
「ついたらまた連絡するから、それじゃー」
話し終えるとポケットにしまって、駅の中にあるカフェに向かう。
だいたい、電話相手の彼女との待ち合わせそうだ。
向こうが平気で30分ぐらい遅刻する。
彼女も早く家をでるように努力しているが、交通機関が必ずと言って良いほど遅延する。
それはわかっているのでいつものカフェラテを頼んで、外がよく見える窓側のカウンター席に座る。
トレーをおいてカフェラテを一口飲んで一息つく。
外をしばらく眺めてから、バッグから読みかけの小説を取り出して栞のところから読み始める。
読み終わる前には来れば良いな、と思いながら。