DAYS

『寝耳に何とやら』

第500飛行隊の格納庫は第1から第5まであり、それぞれ、ばらばらに配置してあった。
一度の攻撃で全機体が破壊されないようにするためだった。
照明が必要最低限まで落とされた暗い第4倉庫に男の声が響く。
「さすがに歩き疲れたな。キャラクターだが」
男の台詞に返すものはいない。
が、誰かが聞いている。
格納庫には男以外に機械の竜が一機あるあけだ。
「田辺はどうした?」
男はその機械の竜に向かって尋ねた。
「睡眠中だ」
コックピットあたりから声が聞こえた。
声の主はパイロットではなく、竜そのものだが。
「そうけぇ」
竜の返答を流して、格納庫から出ようと思って立ち止まった。
この場合、「彼はログアウトした」とかそういう返答が普通ではないのか。
いや、仲が良いなら「睡眠中のようだ」とも返せるだろう。
この竜は睡眠中だと断言した。
断言した、ということは実際に見ている可能性もありうる。
「何で、お前が知っているんだ?」
「同じ場所にいるからだ」
竜は具体的に言わなかったが、プレイヤー本人ーーこの場合は本体が正しいーーは「田辺」を抱きしめて眠っている。
「そうけぇ」
「そうだ。何かあるのか」
「いんや。田辺と軽く話そうと思っただけさね」
そういって男は格納庫から出て行く。
さて、このネタをどうやって広めようか、などと考えながら。