DAYS

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アリウムは岩場で空中に投影されているディスプレイを眺めていた。
メールの差出人は先日、交流戦で戦ったギルドのマスターで、交流戦とアリウムの勝利を記念してオフ会を開きたい、というものだった。
しかも、参加費は主催する相手のギルドが持ってくれるという。
アリウムも戦った相手であるスグリに興味はある。
むしろ、会う機会なんてめったにないだろうから、会ってみたいとも思っている。
でも、報復の機会を作ろうとしているのではないか、と疑っている部分もある。
「たぶん、悪い人たちじゃないんだ」
そうつぶやいてから、アリウムはログアウトした。
オフラインのほうがメールをじっくり書くにはちょうどいいのだ。
部屋に戻ると、机の上にあるノートPCを開いて、メーラーを起動する。
一気に書いて、少し直して、全部消して、を何回か繰り返して、自分がどうしたいのかわからないことに気が付いた。
そもそも、オフ会に行っていいのかは親に聞かないとわからない。
幸い、今日は二人とも家にいる。
うーん、と透は唸りつつ、階段を降りた。
居間に入ると母は台所でコーヒーを作っていた。
父は椅子に座って分厚い小説を読んでいる。
「どうしたんだい、透」
「えっと、オフ会に行きたいんだけど、いいかな」
「オフ会か。いいんじゃないかな。もちろん、気を付けたほうがいいけど」
あっさりと結論を述べてから父は、タイミングよく持ってきてくれた母のコーヒーを受け取り、
「母さんはどう思う?」
「私も、いいと思うな。きっと、楽しいと思うよ」
「あっさりなんだね」
「僕らは、積極的に参加していたからね、そういうの」
そういうと父と母は目を合わせて笑った。
もしかして、オフ会で付き合い始めたのだろうか、と透は思ったがそこは聞かないことにする。
「何が心配なのかな?」
と父。
「知らない人と会うことが」
「それは、心配じゃなくて、楽しみ、だよ」
結局、両親は止めるどころか、背中を全力で押し出してきた。
部屋に戻ると、透は覚悟を決めて、メールの下書きをすべて消して、参加する旨のメールを書いた。
幾つか条件を添えて。