#author("2024-11-17T21:12:24+09:00","default:sesuna","sesuna") #author("2024-11-17T21:17:00+09:00","default:sesuna","sesuna") [[DAYS]] 誠司とシアーは久しぶりに二人が出会った浜辺に来ていた。 「思っていたよりも雰囲気は変わってないね」 「あの階段で降りれた方が奇跡だ」 「だいぶ、こう、風情が」 「歩けるから問題はないな、多分」 浜辺に腰を下ろすと、会話は自然と止まった。こうやって波の音を聞きながら、他愛もない会話をしていた時期があった。二人はそれを思い出していた。 「どうして、あの時、話しかけようと思ったの?」 「半分は好奇心」 「物好きだね」 「もう一つは綺麗だと思ったんだ」 「え」 「綺麗だと思ったんだ。その夏の日差しを浴びて輝く金色の髪、汗ひとつ流れない白い肌、究極の美だと」 「本音は」 「綺麗だと思ったのはほんとだ。もう一つは君となら他愛もない話をしていいと思ったんだ」 「へえ」 そう言いながら隣に座るシアーは誠司の手に自身の手を重ねる。誠司は応じるように指を絡めて、 「ほんと、他愛もない話をしたな」 「石の飛ばし方も教えたっけ」 「人の飛ばし方も実地で教わったね」 「いや、あれは、不可抗力なんだ」 「責任、とってよね」 「俺はあの投げ込みで禊ぎは終わったと思っていたのだが」 「それは甘いと思うよ」 この場合は重たい責任の取り方が求められそうだ。ため息をつきながら、渡すタイミングを失った小箱をポケットの中で転ばせながら、 この場合は重たい責任の取り方が求められそうだ。ため息をつきながら、渡すタイミングを失った小箱をポケットの中で転ばせながら、 「別の方法も用意はしたんだ。受け入れてもらえるかはわからないんだが」 「どんな提案?」 「結婚しよう」 「ここで!?」 「風情がないのはわかってるが、職場だと賑やかになりすぎる」 社長も同僚も性格はいいし、スキルも持っている。が、いかんせん祭り好きなところがあり、職場でやろうものなら、その場で式場の情報がどっさり集まってしまうだろう。下手すればウェディングプランナーと繋がりのある同僚が一気に手筈を整えるまでありえる。 「それはわかるけど」 シアーはそこで言葉を止める。誠司は彼女を見て続きを促す。 「私なんかでいいの?」 「君だからいいんだ」 「ありがとう。指輪持っているんでしょう?」 「なんだ、お見通しか」 誠司な苦笑してから、ポケットに忍ばせていた小箱を取り出し、シアーの目の前まで持っていくと、蓋に軽く力を込める。。小気味よい音がして、飾りっ気のないプラチナリングが姿を現した。 シアーはなんの迷いもなく、それを自身の左手の薬の指にはめると、五指を伸ばしてしばらく、興味深そうにながめ、そして、誠司に向ける。 「似合ってる?」 「ああ、似合ってる」 「サイズはどうやって測ったの?」 「この前のボウリングで」 「期待はしてたんだよ」 シアーは幸せそうに笑う。 「二人の時間、もっと増やしたいね」 「仕事以外のな」 「そうそう」 「二人でこの指輪したらバレるか」 「私だけがしててもバレるよ」 「ふぅむ」 「でも、外す気はないからね」 笑みのままシアーは続ける。その声には充実感からくる力がみなぎっていた。