『相談』

「夏の社員旅行、何処に行くか知ってますか?」

 正面の席に料理の載ったプレートを置いて、アルギズは言った。そのまま、静かに座るといただきます、と一言。

「確か、伊豆だろう。それもマイナーなところ」

小鳥遊さんらしい選択ですよね」

 アルギズの言葉に軽くうなずいてから、

「ところで、泳ぎが上手な人とそうでない人で場所が変わるそうだよ。君はどちらに行くんだい?」

「海は初めてですけど、それなりに泳げますから」

 プールに行ったときは随分と泳ぎが上手かった、と思い出す。

「それなら妻良(めら)、だね」

「見るなら綺麗な海が見たいですし」

「そうだね。僕も妻良の方に行こうと思ってる」

「一緒の宿になると良いですね」

「……よほどくじ運が良くないとそうはならないだろうけど」

 自分がふと、沈んでいることに気づいて慌てて立て直すアズ。

「ところでアズは海に行ったことがあるんですか?」

「え、ああ。何度か、泊まりで行ったことがあるよ」

 その言葉にアルギズは素直に喜んで、

「そうですか。もし良かったら、準備に付き合ってくれませんか?」

「別に構わないよ」

「ありがとうございます。何が必要なのかよくわからなくって困ってたんです」

「わかった。それじゃ、いつにしようか」

「次の休みでどうでしょう?」

「それで決まりだ。時間と場所はいつも通りで」

「はい」