DAYS

『救助』

デブリが激突するまで一瞬だった。
自機であるD-125の放った迎撃ミサイルは目標のデブリに命中した。
計算通りだったが、デブリのデータに誤差があった。
その誤差はデブリの破片の飛ぶ方向の計算を狂わせ、破片はD-125の推進器を破壊した。
「参ったなぁ」
軽い調子で彼は言う。
推進力を失った機体は淡い大気により減速し、徐々に高度が下がっている。
このままなら、3分弱で機体は大気圏に突入し、大気との摩擦で燃え尽きる。
機体に乗っている彼も同じ運命だ。
救助隊が向かっているが、最寄りのステーションから最高速で飛行しても4分はかかる。
1分の差で機体が落ちる。
「こちら管制室。D-125応答せよ」
「こちらD-125。管制室、良く聞こえる」
大気圏内自動防衛システムが援護に入る」
「管制室、それはどういうことだ?」
「システム管理課に確認した。詳細なデータを転送する」
同時にデータが送られてきた。
救出には防衛システムの試験中の機体を使うと書いてあった。
機体名はXK-00ブラックナイト
落下中のD-125をその機体で押し上げる。
単純な話だ。

大気圏内自動防衛システムXSの10番機がD-125に起こった事態を捉えていた。
システムは瞬時にD-125が大気圏に突入することを予測し、複数の救助プランを作成。
その中からもっとも高いプランをデブリ迎撃課の管制室に送信した。
承認が出ると同時、XS10の直上に巨大な機体が現れた。
紡錘状の盾を二枚重ねた機体だった。
何もないところから出現することなど無かったのようにXK-00ブラックナイトはブースターを点火した。
白い雲を残してブラックナイトの姿が消える。

ブラックナイトの前部カメラが落下中のD-125を捉えた。
機体の上面と下面にあるエアブレーキ展開、減速。
減速終了後に二つ重なった盾が別れた。
下部は推進器を有するフライトユニット、上部にはヒト型のロボットが見える。
上部はそのまま、そのロボットの盾となった。
「D-125、聞こえるか?」
ブラックナイト、聞こえるぞ。問題ない」
「今からこの機体でその機体ごと押し上げる」
「D-125、了解。ショックに備える」
ブラックナイト了解」
短いやり取りを済ませ、ブラックナイトは左手の盾を構えてD-125に近づいた。
ブラックナイトの手でD-125を支えるとD-125が崩壊する恐れがあった。
そのまま、大型のシールドをD-125の機体下部に静かにあてる。
盾の上にD-125が乗る形だ。
乗ったのを確認すると、ブラックナイトは推進器を惑星に向けて噴射。
ブラックナイトが動き始めると、ゆっくりと、D-125も動き始める。
安全高度まで押し戻して、待機していた救助隊にD-125を預ける。

「こちら、D-125。ブラックナイト、ありがとう」
「こちら、ブラックナイト。礼はエリスに言ってくれ」