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創者とコミュニティと【D-C-2】

 自室で瞬子がいつものようにPCの前で唸っていると、

「創作するのにコミュニティは必要かしら?」

 背後のベッドの上からカシスの問いが飛んできた。瞬子はひたすら入力と削除を繰り返していた両手を膝の上に置いて、

「いると思う。困った時に知恵を出し合えるコミュニティは特に」

 カシスの問いに瞬子は即答した。彼女は伺かというデスクトップマスコットのキャラクターデータを使っている。立ち絵を専用スクリプトで制御して台詞を吹き出しに表示できる。起動した時間に応じて台詞を変えたり、日付にあわせた特別なイベントを起こしたりもできる。
 立ち絵と台詞だけでも考えることが多いのにプログラミング的な要素が絡んでくると、独学には限界がある。様々な人がブログやWikiの形で記録を残してくれているが、運良く見つけられるとも限らない。
 そのような性質もあるのか、作者同士で助け合う文化がある。最初は質問をする機会が多かった瞬子も回答することも増えてきていた。
 瞬子からそのような趣旨を聞いたカシスは、

「それは必要よね」

 と頷いた。

「いらないコミュニティは、あるの?」
「集まりたいから集まっているのだから、いらないコミュニティはないわ」

 いる、いらないの話をしたのだから、いらない、もありそうなのに、と瞬子は首を傾げる。カシスなりの気遣いなのだとは思うが物足りない。

「その人にとって、なら、積極的に関わらなくていいコミュニティもあるでしょうね」

 気持ちが伝わったのか、カシスはそんなことを言った。

「その人にとってかぁ」
「何をしたいのか、何ができるのか。それによって、聞きにいく相手や助ける相手が変わるでしょう?」
「レベルに応じて変わるってこと?」

 言いたいことはわかる。場違いなところにいけば、質問することも回答することもできない。あるいは、有意義な情報交換はできない。

「衣替えのようなものよ」

 コミュニティを率先して乗り換える、と解釈できる。これもいっていることはわかるのだけど、

「どちらにしても表現は厳しいかな」
「そうかもしれないわね」

 厳しいことを言っている自覚はあるんだ、と瞬子は心の中で少々、驚いた。今までのカシスなら、いらないコミュニティもある、とばっさり切り捨てそうなのにそうはせず、誰かしらにとって必要とされていると言ったのはどういう心境の変化だろうか。

「ばっさり切らないんだね」
「ばっさり切る時は切るわよ。ただ、角を立てても敵が増えるだけだもの。それに……」
「それに……?」
「相性はどうしてもあるのよ。お互いにね」

 何か経験をしたのだと瞬子は納得する。行動力がある分、失敗もそれなりにあるだろう。歯に衣着せぬ物言いと物事を前に進めようとする姿勢は、新しいことをどんどんやりたい人たちと相性はいいだろう。ゆっくりやりたかったり、和やかにすすめたい人たちとは相性があまりよくないのは、瞬子にも簡単に想像がつく。

「いろいろ苦労しているんだね」
「お互いにね」