砂埃が舞う中、僕らは機甲種を求めて走っていた。
分布に偏りがあるらしく、出現のタイミングはばらばらだ。
それでも数は倒せているようで、ポイントは確実に増えていた。
ふと、隣を行くキンドルが足を止めてあるものを指差した。
機関砲だ。
最近になってアークスが援護のために設置し始めたもので、不定期に弾薬の補給やメンテナンスが行われているそうだ。
しかし、設置場所がいい加減で岩が射線上に入り死角がある場合もあって、チーム内では撃つと楽しいもの扱いだ。
「撃ってみます?」
銃についての知識も心得もないのに撃つ気にはなれなかった。
「素人が扱うものではないだろう」
「使い方なら教えますから」
「フムン」
キンドルの射撃の腕は確かだ。
そういう人物に教われるのは幸いといえる。
僕は考えを改めてキンドルに教えてほしいとお願いした。
「はいっ!」
照準はハンドルで行い、倒した方向に応じて方向を変える。
ハンドルの親指の部分に安全装置つきのトリガーがあり、解除してから弾けば射撃する。
自動照準はない。
機関砲の操作は非常に単純かつ明快だ。
「火力は高いので楽しいですよ」
とキンドルは僕の横で嬉しそうに説明を続ける。
「味方にあてないように気をつけてくださいね」
一瞬、前後の文脈があってないように感じ、キンドルの横顔を見て、切り離して考えることにする。
「トリガーの安全装置は親指で弾いて押すんです」
安全装置は透明なカバーで、トリガーに覆いかぶさっていた。
「こうやって……」
キンドルの手がハンドルに伸びる。
グローブで隠れて見えないが綺麗な指だろう、と思考が現実から外れた。
キンドルの指が僕の手に触れて――僕の思考は復帰した。
「すまない」
短く謝って手を引く。
横を見ればキンドルが顔を真赤にして口をパクパクとさせている。
「キンドル」
名を呼ぶ。
「は、はいっ」
僕より現実に帰るには時間がかかりそうだった。
幸い、周囲に敵の影はない。
敵を撃ち倒している時の厳しい眼差しは何処へ行ったのか、とキンドルの顔を眺めながら思う。
「……安全装置の解除の方法、でしたね」
帰ってきたようだ。
内心でおかえり、と呟きつつ、
「そうだ」
といつもの調子で応じる。
既にハンドルからは手を退けてある。
彼女は改めてハンドルに手を伸ばし、ぱちっと指で安全装置を弾き、トリガーを押した。
快音とともに弾が前に飛んでいく。
「こうやって使うんです」
安全装置を下ろしてキンドルは言った。
「フムン」
習って安全装置を指で弾き、トリガーを押す。
先と同じように快音を引き連れて弾が前に向かって飛ぶ。
「なるほど、使い方はわかった」
「それは良かったです」
嬉しそうな彼女の笑顔を見ながら、彼女が撃っているほうが似合う、と考えた。
僕は給弾に徹していよう。