PSO2

バーにて

バーカウンターの設置自体は楽だった。
骨が折れたのは酒類を並べる作業で結局、丸一日かかってしまった。
セットでついてきたグラスを拭いているとエオがやってきた。
「立派なバーカウンターだね」
カウンターを見るなりエオはそういった。
「設置した甲斐があるというものだ。酒は皆、飲むのか?」
「まちまちだね。わたしは飲む、かな」
そして、カウンターに両肘をつきながら、カシスオレンジが飲みたい、と言った。
「キャストが酒を飲んで酔うのか?」
問いながらペオズはレシピを確認する。
二種類の酒を混ぜるだけで簡単にできそうだった。
「酔ったふり、かな。飲んだアルコール量に応じて、自己判断能力を落とす、そういうことができる」
ゆっくりとした調子で言い聞かせるようにエオは言う。
「便利なのか不便なのかわからないな」
赤紫の液体が入ったグラスを差し出しながらペオズは言った。
人に合わせて生活するのであれば、酒を飲み交わすことも求められるのか、と考える。
彼の言葉を聞きながらエオはマドラーでゆっくりかき混ぜながら、
「人と話をするときには便利だよ。お酒のせいって言えるから」
「では、酒のせいということで聞きたいことがある」
カシスオレンジをゆっくりと一口飲んでからエオは、
「何かな?」
と答えた。
「チームに誘う時に言った台詞を覚えているか?」
「君のような必要なんだ……そう言ったね」
目を閉じてエオは答えた。
まるで台詞を思い出すように。
「そうだ。それは、キンドルのことだろう?」
過去の暗い記憶にふと沈むキンドルを助けたい、力になりたいとペオズは思ったのだ。
彼女が見込んだように対話する用意がある彼の助力もあって、少しずついい方向に進んでいるように見える。
「うん」
エオは微笑みとともに頷いた。
その彼女にこの問いは酷か、と僅かに感じつつ、疑問をぶつける。
「何処まで考えていた? 僕が彼女に好意を寄せるところまで考えていたのか?」
ペオズの問いにエオは一瞬だけ目を見開き、しかし、すぐに先の微笑に戻して、
「そこまで考えられたら、いいな。でも、違うよ」
「そうか」
何か企んでいるような物言いが多い彼女だが、そこまでは考えていなかったらしい。
「そうだったら、キンドルに嫌な思いはさせなかったよ」
遠くを見るような表情でエオは答えた。
「すまない。すべて想定済みなのではないか、と疑っていた」
ペオズはいつの間にか入っていた体の力を抜いた。
「あなただったらきっと、と思って声をかけたのは本当だよ」
「あの一回の戦闘だけでその判断を? 博打だ――信じられないな」
「その後の会話も参考にしたよ」
「フムン」
それはあの時のやり取りでも聞いた。
「そうだね。博打といえば博打だったと思うよ。今のところは、勝っている、かな」
「今のところか。確かに先はわからない」
エオはペオズを見上げながら、
「……ずっと勝たせ続けてくれないかな」
勝たせ続ける、それはペオズがキンドルの力になり続けることだ。
見上げるエオを見下ろしながら、
「誰がやっているのかわからない賭けに乗る趣味はない。言われなくても成すべきことは成す」
「ごめん」
「怒ってはいない――意志の表明だ」
「そっか」
誤解は解かなければ、と彼は窓の向こうを見ながら思いを言葉にする。
「そうだ。言われなくても僕は彼女のそばに在り続ける」
感じた視線のもとを辿れば、エオと目があった。
彼女は目を逸らさずにペオズに告げる。
「その言葉が聞けてよかった。うん、あなたをチームに誘って正解だった」
どう返そうかペオズは悩み、
「――飲み過ぎだ。そろそろやめておけ」
「素直じゃないなぁ」
ペオズは肩をすくめた。

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Last-modified: 2012-09-22 (土) 20:49:58