天体観測 をテンプレートにして作成
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* 天体観測 [#w71b2669]
雫を帯びた夜の草原を歩いているせいで、コートは冷たく濡れ...
動き続ける筋肉は熱を発するが、外気に触れすぐに冷える。
趣味の自転車のおかげか、まだ体力は続いている、と前を歩く...
白い息を吐き出すわけでもなく、ペースを乱すことも無く、た...
目的地は何処なのか、アズリエルが尋ねようと口を開こうとす...
「ここです」
「……特に何か面白いものがあるとは思えないな」
見渡しても目に飛び込むのは雫をまとった草だけだ。
「それはどうでしょうか」
持ってきたシートを草の上に広げて、アルギズは寝転んで正面...
「アズもこうしてみてください」
言われるまま、アルギズと同じように空を見る。
「すごいでしょう?」
「……」
二人の目に飛び込んできたのはいくつもの星たちだ。
それは視界全域を埋め尽くし瞬いている。
「本当にすごいな……」
息を大きく吐き出しながらアズリエルは言った。
冷たい空気が肺に入り込み火照った身体を奥から冷やした。
草の感触と満点の星を楽しみながら、アルギズは静かに歌い始...
その歌はアズリエルも知っている歌だ。
彼女の好きなバンドの歌で、TVで何度か聴いた事がある。
恋愛の歌に聞こえるが、本当は過去の自分と今の自分の歌とい...
おぼろげに覚えているメロディを必死に思い出し、彼女の声に...
歌いだす彼をアルギズは少し驚いた顔で見た。
その顔はすぐに微かな笑みに、視線は空に戻った。
二人の小さな歌声が夜空に吸い込まれる。
最後まで歌い切ると満足感と穏やかな静けさが訪れた。
「それにしても、街から少し離れただけでこんなに星が見える...
感慨深そうにアズリエルは言った。
「はじめてここに来た時は、私も驚いたんですよ」
一拍間を空けてアルギズは囁くように話を続けた。
こちらに来たはじめの頃は、色んなことに不慣れだったこと。
特に音や空気に馴染めずよくここに来ていたこと。
そして、他人を招いたのはアズリエルがはじめてであると言う...
すべてを聞き終えてアズリエルは、
「ありがたいこと、なのかな」
と呟いた。
アルギズは答えず、静かに立ち上がった。
彼女の小さな背中の向こうには果てのない星の海が広がってい...
「そろそろ帰りましょうか」
「そうしようか」
「あ、帰りは飛んで帰りましょう」
「僕は飛べないんだけど……」
「お姫様抱っこなんてどうでしょうか」
いたずらっぽい笑みを浮かべて言う彼女を無視して、アズリエ...
「冗談ですよ。手、しっかり握っていてください」
「……これはこれで恥ずかしいね」
「たまにはいいと思いますよ、こういうのも」
そういったアルギズの背中には黒い翼が現れた。
その向こうにある宇宙の闇よりも深い漆黒の翼だ。
「行きますよ」
「ああ」
アズリエルの頷きと同時に漆黒の翼は白い飛沫を上げ羽ばたい...
飛翔の瞬間に起こった風は波紋のように草原を駆け広がってい...
ふと、上を見ると先よりも近いところに星がある。
手を伸ばせば届くと錯覚出来るぐらいに。
気づけば空の星は輝きは弱まり別の星の輝きが増していた。
「地上の星、ですね」
アルギズの呟きに頷きながらアズリエルは思う。
これが彼女の視点なのだと。
そしてこう願った。
いつかは自分の力で同じ視点に立てるように、と。
終了行:
* 天体観測 [#w71b2669]
雫を帯びた夜の草原を歩いているせいで、コートは冷たく濡れ...
動き続ける筋肉は熱を発するが、外気に触れすぐに冷える。
趣味の自転車のおかげか、まだ体力は続いている、と前を歩く...
白い息を吐き出すわけでもなく、ペースを乱すことも無く、た...
目的地は何処なのか、アズリエルが尋ねようと口を開こうとす...
「ここです」
「……特に何か面白いものがあるとは思えないな」
見渡しても目に飛び込むのは雫をまとった草だけだ。
「それはどうでしょうか」
持ってきたシートを草の上に広げて、アルギズは寝転んで正面...
「アズもこうしてみてください」
言われるまま、アルギズと同じように空を見る。
「すごいでしょう?」
「……」
二人の目に飛び込んできたのはいくつもの星たちだ。
それは視界全域を埋め尽くし瞬いている。
「本当にすごいな……」
息を大きく吐き出しながらアズリエルは言った。
冷たい空気が肺に入り込み火照った身体を奥から冷やした。
草の感触と満点の星を楽しみながら、アルギズは静かに歌い始...
その歌はアズリエルも知っている歌だ。
彼女の好きなバンドの歌で、TVで何度か聴いた事がある。
恋愛の歌に聞こえるが、本当は過去の自分と今の自分の歌とい...
おぼろげに覚えているメロディを必死に思い出し、彼女の声に...
歌いだす彼をアルギズは少し驚いた顔で見た。
その顔はすぐに微かな笑みに、視線は空に戻った。
二人の小さな歌声が夜空に吸い込まれる。
最後まで歌い切ると満足感と穏やかな静けさが訪れた。
「それにしても、街から少し離れただけでこんなに星が見える...
感慨深そうにアズリエルは言った。
「はじめてここに来た時は、私も驚いたんですよ」
一拍間を空けてアルギズは囁くように話を続けた。
こちらに来たはじめの頃は、色んなことに不慣れだったこと。
特に音や空気に馴染めずよくここに来ていたこと。
そして、他人を招いたのはアズリエルがはじめてであると言う...
すべてを聞き終えてアズリエルは、
「ありがたいこと、なのかな」
と呟いた。
アルギズは答えず、静かに立ち上がった。
彼女の小さな背中の向こうには果てのない星の海が広がってい...
「そろそろ帰りましょうか」
「そうしようか」
「あ、帰りは飛んで帰りましょう」
「僕は飛べないんだけど……」
「お姫様抱っこなんてどうでしょうか」
いたずらっぽい笑みを浮かべて言う彼女を無視して、アズリエ...
「冗談ですよ。手、しっかり握っていてください」
「……これはこれで恥ずかしいね」
「たまにはいいと思いますよ、こういうのも」
そういったアルギズの背中には黒い翼が現れた。
その向こうにある宇宙の闇よりも深い漆黒の翼だ。
「行きますよ」
「ああ」
アズリエルの頷きと同時に漆黒の翼は白い飛沫を上げ羽ばたい...
飛翔の瞬間に起こった風は波紋のように草原を駆け広がってい...
ふと、上を見ると先よりも近いところに星がある。
手を伸ばせば届くと錯覚出来るぐらいに。
気づけば空の星は輝きは弱まり別の星の輝きが増していた。
「地上の星、ですね」
アルギズの呟きに頷きながらアズリエルは思う。
これが彼女の視点なのだと。
そしてこう願った。
いつかは自分の力で同じ視点に立てるように、と。
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