『裸の何とやら』 をテンプレートにして作成
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開始行:
[[DAYS]]
* 『裸の何とやら』 [#r629f601]
ハガラズはフィールドワークと称して、未開拓エリアを一日中...
襲いかかってくる接近戦型FSを自分の背よりもある剣で切り倒...
人間ならばとっくの昔に死んでいるだろうが、近接戦闘用に特...
彼がシャワーを浴びているのは疲れを取るためではなく汚れを...
タワシでごしごしと身体を洗っている様――それも見た目は成人...
「ハガラズ」
磨りガラス越しに坂下のくぐもった声。
「なんだよ」
といつものぶっきらぼうな調子でハガラズは返した。
いつものように何か調べ物か届け物を頼むつもりなのだろう。
「カシスも一緒にいれて」
予想とは違う台詞にハガラズは思わず、
「は?」
「カシスもいれてと言っているの」
カシスは"女の子"であり、自分は仮にも"男"だ。
普段は坂下が風呂に付き合っているというのに何故、男の自分...
シャワーを止めて、扉を見れば坂下のシルエットが見える。
そのシルエットに向かって、
「なんでだよ」
「これから私、会議があるから」
答える坂下の声はくぐもっているが迷いも何も無い平然とした...
「俺、男なんだがなぁ」
「カシスに何かあったら承知しないから」
そこそこの背のある坂下のシルエットが消えて、そのシルエッ...
いつも見慣れている身長より、若干、高くなっている。
「私は気にしないわ」
シルエットの主が告げる。
これはすぐに入ってくる、とハガラズは判断して、慌てて腰に...
腰の右に結び目を作ったところで、扉が開き小さな女の子が入...
カシスだ。
「そんなに気にすること?」
「フツーはな」
なんで俺の方がこんな恥ずかしいと思ってるんだ、と疑問が過...
対照的にカシスは我関せずと言ったところだ。
「私はヒトじゃないのにね」
そのまま、風呂用の背の低い椅子に座り、桶にお湯を溜めはじ...
「身体は女の子じゃねぇかよ」
諦め混じりにハガラズ。
彼女の言うとおり、彼女はヒトでもないし、アンドロイドでも...
ハガラズ自身も男性型アンドロイドであり、人間における男女...
それでもハガラズが気にするのは人間の文化にどっぷり浸かっ...
カシスが桶の湯を頭から被ると、シャンプーを手につけて頭を...
「幼女の身体に興奮するの?」
「自分で言うか阿呆」
いや、俺が阿呆か、などと突っ込みを入れながら、ハガラズは...
彼が足を伸ばすのに十二分のスペースがあった。
「坂下とは一緒に入ってるのか?」
「そうよ」
この広さなら余裕だろう。
「命が身体を洗ってくれるの」
「ほぅ、そいつは知らなかった」
彼に背を向ける形、シャワーで泡を落としながら、
「今日は自分で洗うわ」
「がさつな俺がやったら穴空くぜ」
穴が空くというのは冗談だが、彼は手先があまり器用ではなか...
「それも面白いかも知れないわ」
浴室に反響する声には笑みが含まれている。
「お前なぁ」
完全にカシスのペースになっているな、と湯船の縁に肩、壁に...
よく手入れされた天井にはカビも汚れも無い白の色だ。
そりゃ、毎日のように掃除してんだから当然だろ、と自身の感...
いらついてるなぁ、とハガラズは自覚する。
「良いかしら?」
カシスの言葉に思考が現実に戻ってくる。
彼の足の先にカシスが立っている。
「タオルで前を隠すぐらいしたらどーなんだよ」
「自分の姿勢を見てから言ったら?」
「……気にするかよ」
本日中最高にぶっきらぼうな調子で返す。
「そう」
静かに頷いてカシスも湯船に身体を沈める。
ハガラズは伸ばしていた足を引っ込めて、カシスの入る空間を...
身体を隠すこともなく、カシスはハガラズの正面で肩まで浸か...
「すまん」
申し訳なさそうにハガラズは言った。
「どうしたの?」
「俺はお前の事が気に入らないらしいんだ。どういうわけか、...
おいおい、何を言っているんだよ、俺は、と彼の内心を無視す...
目をつむり、頭を振っても、それは同じだった。
「それじゃいけねぇとは思ってる。でも、どうにもできねぇん...
言葉は続かなかった。
カシスの指がハガラズの唇に触れたからだ。
目を開けると、湯船の底に手をついて、こちらに身を乗り出し...
「どうにもできないならそれで良いわ。悪意や敵意なんて向け...
「それじゃ、俺は」
まだ、話は終わっていないといわんばかりにカシスが指を再び...
「私はあなたではないから、なぜ当たるのかはわからないわ」
すぐに届く声と反響してから届く声がいくつも頭の中に届く錯...
聴覚のフィルタリングを強化して、反響分を削る。
「仲間を殺した敵が悠々と暮らしていることが許せないのかも...
隣、良いかしら、とカシス。
いきなりなんだよ、と尋ねると話が長くなりそうだから、と返...
渋々とハガラズは良いぞ、と言った。
「邪推と言っても良いわ。悪意のある解釈の方がしっくり来る...
そう言うカシスの声は何処が楽しそうだ。
「俺が俺を許せなくてお前に当たるって最低じゃねぇか」
「ヒトもアンドロイドも感情の割り切りが下手だもの」
「お前なぁ……」
「呆れた?」
「かなり」
「正直ね」
「自分を軽視しすぎじゃねぇの?」
「あら、自分を大切に思っているから、こうやって話している...
むぅ、とハガラズは低い声で唸った。
「誤解されたままよりは誤解を解いた方が良い。そう思っただ...
「……俺はお前のその性格が許せねぇのかもしれない」
腹から絞り出すようにハガラズは言った。
「性格の不一致ばかりはどうにもできないわね」
先と変わらぬ楽しそうな口調でカシスは返した。
「あれだな」
次の言葉が出てこない。
「あー」
横からカシスの視線を感じる。
こちらの続きを待っている、そんな気がした。
「俺の考えすぎって奴か。慣れないことに頭を使うもんじゃね...
カシスに切られるかも知れない、と思って発した言葉への返答...
「ふふ」
短い笑いだった。
「何がおかしいんだよ」
「可愛いわね」
「うっるせーな。それによ……」
「何?」
お前が気にしてねぇんだから、俺も気にするのやめりゃ良いん...
「やっぱ、何でもねぇよ」
彼女に負けたような気がして言いたくなかったのだ。
それでも、彼女には見透かされているのかも知れないのだが。
終了行:
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* 『裸の何とやら』 [#r629f601]
ハガラズはフィールドワークと称して、未開拓エリアを一日中...
襲いかかってくる接近戦型FSを自分の背よりもある剣で切り倒...
人間ならばとっくの昔に死んでいるだろうが、近接戦闘用に特...
彼がシャワーを浴びているのは疲れを取るためではなく汚れを...
タワシでごしごしと身体を洗っている様――それも見た目は成人...
「ハガラズ」
磨りガラス越しに坂下のくぐもった声。
「なんだよ」
といつものぶっきらぼうな調子でハガラズは返した。
いつものように何か調べ物か届け物を頼むつもりなのだろう。
「カシスも一緒にいれて」
予想とは違う台詞にハガラズは思わず、
「は?」
「カシスもいれてと言っているの」
カシスは"女の子"であり、自分は仮にも"男"だ。
普段は坂下が風呂に付き合っているというのに何故、男の自分...
シャワーを止めて、扉を見れば坂下のシルエットが見える。
そのシルエットに向かって、
「なんでだよ」
「これから私、会議があるから」
答える坂下の声はくぐもっているが迷いも何も無い平然とした...
「俺、男なんだがなぁ」
「カシスに何かあったら承知しないから」
そこそこの背のある坂下のシルエットが消えて、そのシルエッ...
いつも見慣れている身長より、若干、高くなっている。
「私は気にしないわ」
シルエットの主が告げる。
これはすぐに入ってくる、とハガラズは判断して、慌てて腰に...
腰の右に結び目を作ったところで、扉が開き小さな女の子が入...
カシスだ。
「そんなに気にすること?」
「フツーはな」
なんで俺の方がこんな恥ずかしいと思ってるんだ、と疑問が過...
対照的にカシスは我関せずと言ったところだ。
「私はヒトじゃないのにね」
そのまま、風呂用の背の低い椅子に座り、桶にお湯を溜めはじ...
「身体は女の子じゃねぇかよ」
諦め混じりにハガラズ。
彼女の言うとおり、彼女はヒトでもないし、アンドロイドでも...
ハガラズ自身も男性型アンドロイドであり、人間における男女...
それでもハガラズが気にするのは人間の文化にどっぷり浸かっ...
カシスが桶の湯を頭から被ると、シャンプーを手につけて頭を...
「幼女の身体に興奮するの?」
「自分で言うか阿呆」
いや、俺が阿呆か、などと突っ込みを入れながら、ハガラズは...
彼が足を伸ばすのに十二分のスペースがあった。
「坂下とは一緒に入ってるのか?」
「そうよ」
この広さなら余裕だろう。
「命が身体を洗ってくれるの」
「ほぅ、そいつは知らなかった」
彼に背を向ける形、シャワーで泡を落としながら、
「今日は自分で洗うわ」
「がさつな俺がやったら穴空くぜ」
穴が空くというのは冗談だが、彼は手先があまり器用ではなか...
「それも面白いかも知れないわ」
浴室に反響する声には笑みが含まれている。
「お前なぁ」
完全にカシスのペースになっているな、と湯船の縁に肩、壁に...
よく手入れされた天井にはカビも汚れも無い白の色だ。
そりゃ、毎日のように掃除してんだから当然だろ、と自身の感...
いらついてるなぁ、とハガラズは自覚する。
「良いかしら?」
カシスの言葉に思考が現実に戻ってくる。
彼の足の先にカシスが立っている。
「タオルで前を隠すぐらいしたらどーなんだよ」
「自分の姿勢を見てから言ったら?」
「……気にするかよ」
本日中最高にぶっきらぼうな調子で返す。
「そう」
静かに頷いてカシスも湯船に身体を沈める。
ハガラズは伸ばしていた足を引っ込めて、カシスの入る空間を...
身体を隠すこともなく、カシスはハガラズの正面で肩まで浸か...
「すまん」
申し訳なさそうにハガラズは言った。
「どうしたの?」
「俺はお前の事が気に入らないらしいんだ。どういうわけか、...
おいおい、何を言っているんだよ、俺は、と彼の内心を無視す...
目をつむり、頭を振っても、それは同じだった。
「それじゃいけねぇとは思ってる。でも、どうにもできねぇん...
言葉は続かなかった。
カシスの指がハガラズの唇に触れたからだ。
目を開けると、湯船の底に手をついて、こちらに身を乗り出し...
「どうにもできないならそれで良いわ。悪意や敵意なんて向け...
「それじゃ、俺は」
まだ、話は終わっていないといわんばかりにカシスが指を再び...
「私はあなたではないから、なぜ当たるのかはわからないわ」
すぐに届く声と反響してから届く声がいくつも頭の中に届く錯...
聴覚のフィルタリングを強化して、反響分を削る。
「仲間を殺した敵が悠々と暮らしていることが許せないのかも...
隣、良いかしら、とカシス。
いきなりなんだよ、と尋ねると話が長くなりそうだから、と返...
渋々とハガラズは良いぞ、と言った。
「邪推と言っても良いわ。悪意のある解釈の方がしっくり来る...
そう言うカシスの声は何処が楽しそうだ。
「俺が俺を許せなくてお前に当たるって最低じゃねぇか」
「ヒトもアンドロイドも感情の割り切りが下手だもの」
「お前なぁ……」
「呆れた?」
「かなり」
「正直ね」
「自分を軽視しすぎじゃねぇの?」
「あら、自分を大切に思っているから、こうやって話している...
むぅ、とハガラズは低い声で唸った。
「誤解されたままよりは誤解を解いた方が良い。そう思っただ...
「……俺はお前のその性格が許せねぇのかもしれない」
腹から絞り出すようにハガラズは言った。
「性格の不一致ばかりはどうにもできないわね」
先と変わらぬ楽しそうな口調でカシスは返した。
「あれだな」
次の言葉が出てこない。
「あー」
横からカシスの視線を感じる。
こちらの続きを待っている、そんな気がした。
「俺の考えすぎって奴か。慣れないことに頭を使うもんじゃね...
カシスに切られるかも知れない、と思って発した言葉への返答...
「ふふ」
短い笑いだった。
「何がおかしいんだよ」
「可愛いわね」
「うっるせーな。それによ……」
「何?」
お前が気にしてねぇんだから、俺も気にするのやめりゃ良いん...
「やっぱ、何でもねぇよ」
彼女に負けたような気がして言いたくなかったのだ。
それでも、彼女には見透かされているのかも知れないのだが。
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