『再考』 をテンプレートにして作成
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* 『再考』 [#l34933ea]
「田辺は私と居ることをどう思っているのだ?」
「どうって、いきなり訊かれてもな」
「得るものがあるのかどうかだ」
「一緒にいて楽しいよ」
「それだけか?」
「お前はどうなんだよ」
「人間とは何かを知っていく。田辺とは何者かを知っていく」
「楽しくはないのか?」
「楽しいと呼ばれる感情はわからない。だが、一緒にいる理由...
「……」
「互いの欠点を補うためだ。人間が集団を形成および対になる...
「相手の把握はその一環……」
「そうだ」
「……」
「理由が見つからないのなら、一週間後にこの関係を終了する」
「なっ」
「私は寄生することを望んでいない」
「待てよ、エリスっ」
自分はどう思っているのだろうか、と田辺は自問自答する。
エリスは田辺のことを自分の機構の一部だと言った。
それに対し、田辺はそれを愛することの結果だと返した。
エリスからの告白と解釈して良いだろう。
それに対し、田辺は未だに返答をしていない。
今回は業を煮やしたと見るべきだ。
「何やってるんだろ」
綺麗になった部屋の真ん中に寝ころびながら天井を見る。
つい、一週間前までは散らかり、薄暗い部屋だったのが今は違...
寝ころんでも問題がないぐらい綺麗になり、部屋には夕日が差...
似たようなことが昔もあった、と彼は思い出した。
あの時はこちらが主導権を握っていたが、何かの拍子で主導権...
主導権が田辺にあるうちに田辺はその女をふった。
「いや、逃げたんだ」
彼女なら逃亡したのだ、と言うのだろうか。
エリスが今日の今日まで付き合ってくれていたのが奇跡だ。
とにかく、俺は彼女をどう思っているのだろう、と言うのが最...
「……断定すら出来ない?」
自分に主導権が無いからだ、と気づいてはっとする。
身体を起こすのと涙がこぼれるのは同時だ。
右の手でこぼれる涙をぬぐいながら、田辺は静かに泣いた。
どれぐらい泣いたのかはわからないが、いつの間にか夕日は沈...
さっきまでのどろどろとした感情は消えて、残っているのはは...
俺はエリスが好きだ。
だが、彼女と対等になるにはそれだけでは足りない。
明確な理由が必要だ。
エリスは自分の機構の一部だと言った。
田辺を一部として認識することで、人間を理解できるようにな...
俺はどうだ?
それに対して、自分も必要だとしか返していない。
どう、必要なのかが答えられていない。
エリスを見ている自分も頑張らなければと思える、と言うのは...
少なくとも、X-2のエリスと一緒で無くても良い。
「俺が彼女の一緒に居たいのはなぜだ? 考えろ、考えるんだ」
相手はAIだ、それでも良いのか、と疑問が沸くがすぐに斬り捨...
身体を構成するものが何であれ、エリスはエリスだ。
エリスが好きであり、必要なのはわかっている。
そうだ、自分には無い要素を持ち、自分の欠点を埋めてくれる...
「だが、あいつはその先に行ける」
田辺を通してエリスは人間の感情を理解していく。
人間の感情を理解できるようになったら、エリスは田辺を捨て...
答えが出てこない理由はこれではないか、と田辺は思う。
自分の答えを出したところで、それが弱ければ、そう遠くない...
「此処で止められなければ、すぐにでも離れるか」
田辺は苦い笑いを浮かべて、ゆっくりと立ち上がる。
結局のところ、エリスのように他人を自分の一部として認識す...
言い換えれば、他人を愛する覚悟ができていない。
なるほど、この事態はすべて自分が引き起こしたことではない...
望む望まないにしても、行動には結果が付きまとう。
その結果がこれだ。
エリスは寄生することを望んでいない、と言った。
「エリスが寄生?」
寄生するのも生き方の一つではあるが、エリスと寄生と言う言...
エリスはそう言う立場にはない。
だが、彼女は寄生することを望んでいない、と言ったのだ。
エリスは田辺を利用して、人間の感情を理解している、とも言...
俺はどうだ、と問えばエリスに対して、これといったことをし...
エリスを利用して何かを得ようと思ったことがなかった。
そう考えると、エリスの言葉の意味が見えてくる。
「共生、か」
エリスが田辺を必要とするように田辺もエリスを必要とすれば...
互いに互いを己の一部の認識し、利用し合う。
欠点を補うだけでなく、互いに発展していく。
人間同士でも本来はそうなのだろう。
他人に自分を委ねることでもあるし、相手を信頼しなければ出...
「エリスを信用できない?」
あまりにも真っ直ぐ過ぎて受け入れられないだけだ。
過去の経験から言えばそうだ。
自分の欠点が浮かび上がってくる。
それをどうにかしようと思って、少しずつだが動いている。
少しずつ過ぎて、エリスが先に動いたのだ。
この関係を終わらせるために。
シャワーを浴びて、身体を良く拭き、寝間着を着て折りたたみ...
寝ようと思ってもとてもではないが寝られそうに無かった。
そもそも、人間やAI、恋愛という言葉に縛られていないか、と...
俺はエリスを必要としている。
自分の欠点を埋め、欠点を修正し、先に行くため……生きる為に...
問題が片付いた後も、効率が良い限りは一緒に居続ける。
生きるという課題をこなすための特別なチーム、運命共同体。
今ならそう思える。
その答えを彼女がどう受け止めるかはわからない。
受け止められなかったら、受け止められなかった、それだけの...
「決まり、だな」
逡巡が途切れたところで、田辺は深い眠りに沈んでいった。
終了行:
* 『再考』 [#l34933ea]
「田辺は私と居ることをどう思っているのだ?」
「どうって、いきなり訊かれてもな」
「得るものがあるのかどうかだ」
「一緒にいて楽しいよ」
「それだけか?」
「お前はどうなんだよ」
「人間とは何かを知っていく。田辺とは何者かを知っていく」
「楽しくはないのか?」
「楽しいと呼ばれる感情はわからない。だが、一緒にいる理由...
「……」
「互いの欠点を補うためだ。人間が集団を形成および対になる...
「相手の把握はその一環……」
「そうだ」
「……」
「理由が見つからないのなら、一週間後にこの関係を終了する」
「なっ」
「私は寄生することを望んでいない」
「待てよ、エリスっ」
自分はどう思っているのだろうか、と田辺は自問自答する。
エリスは田辺のことを自分の機構の一部だと言った。
それに対し、田辺はそれを愛することの結果だと返した。
エリスからの告白と解釈して良いだろう。
それに対し、田辺は未だに返答をしていない。
今回は業を煮やしたと見るべきだ。
「何やってるんだろ」
綺麗になった部屋の真ん中に寝ころびながら天井を見る。
つい、一週間前までは散らかり、薄暗い部屋だったのが今は違...
寝ころんでも問題がないぐらい綺麗になり、部屋には夕日が差...
似たようなことが昔もあった、と彼は思い出した。
あの時はこちらが主導権を握っていたが、何かの拍子で主導権...
主導権が田辺にあるうちに田辺はその女をふった。
「いや、逃げたんだ」
彼女なら逃亡したのだ、と言うのだろうか。
エリスが今日の今日まで付き合ってくれていたのが奇跡だ。
とにかく、俺は彼女をどう思っているのだろう、と言うのが最...
「……断定すら出来ない?」
自分に主導権が無いからだ、と気づいてはっとする。
身体を起こすのと涙がこぼれるのは同時だ。
右の手でこぼれる涙をぬぐいながら、田辺は静かに泣いた。
どれぐらい泣いたのかはわからないが、いつの間にか夕日は沈...
さっきまでのどろどろとした感情は消えて、残っているのはは...
俺はエリスが好きだ。
だが、彼女と対等になるにはそれだけでは足りない。
明確な理由が必要だ。
エリスは自分の機構の一部だと言った。
田辺を一部として認識することで、人間を理解できるようにな...
俺はどうだ?
それに対して、自分も必要だとしか返していない。
どう、必要なのかが答えられていない。
エリスを見ている自分も頑張らなければと思える、と言うのは...
少なくとも、X-2のエリスと一緒で無くても良い。
「俺が彼女の一緒に居たいのはなぜだ? 考えろ、考えるんだ」
相手はAIだ、それでも良いのか、と疑問が沸くがすぐに斬り捨...
身体を構成するものが何であれ、エリスはエリスだ。
エリスが好きであり、必要なのはわかっている。
そうだ、自分には無い要素を持ち、自分の欠点を埋めてくれる...
「だが、あいつはその先に行ける」
田辺を通してエリスは人間の感情を理解していく。
人間の感情を理解できるようになったら、エリスは田辺を捨て...
答えが出てこない理由はこれではないか、と田辺は思う。
自分の答えを出したところで、それが弱ければ、そう遠くない...
「此処で止められなければ、すぐにでも離れるか」
田辺は苦い笑いを浮かべて、ゆっくりと立ち上がる。
結局のところ、エリスのように他人を自分の一部として認識す...
言い換えれば、他人を愛する覚悟ができていない。
なるほど、この事態はすべて自分が引き起こしたことではない...
望む望まないにしても、行動には結果が付きまとう。
その結果がこれだ。
エリスは寄生することを望んでいない、と言った。
「エリスが寄生?」
寄生するのも生き方の一つではあるが、エリスと寄生と言う言...
エリスはそう言う立場にはない。
だが、彼女は寄生することを望んでいない、と言ったのだ。
エリスは田辺を利用して、人間の感情を理解している、とも言...
俺はどうだ、と問えばエリスに対して、これといったことをし...
エリスを利用して何かを得ようと思ったことがなかった。
そう考えると、エリスの言葉の意味が見えてくる。
「共生、か」
エリスが田辺を必要とするように田辺もエリスを必要とすれば...
互いに互いを己の一部の認識し、利用し合う。
欠点を補うだけでなく、互いに発展していく。
人間同士でも本来はそうなのだろう。
他人に自分を委ねることでもあるし、相手を信頼しなければ出...
「エリスを信用できない?」
あまりにも真っ直ぐ過ぎて受け入れられないだけだ。
過去の経験から言えばそうだ。
自分の欠点が浮かび上がってくる。
それをどうにかしようと思って、少しずつだが動いている。
少しずつ過ぎて、エリスが先に動いたのだ。
この関係を終わらせるために。
シャワーを浴びて、身体を良く拭き、寝間着を着て折りたたみ...
寝ようと思ってもとてもではないが寝られそうに無かった。
そもそも、人間やAI、恋愛という言葉に縛られていないか、と...
俺はエリスを必要としている。
自分の欠点を埋め、欠点を修正し、先に行くため……生きる為に...
問題が片付いた後も、効率が良い限りは一緒に居続ける。
生きるという課題をこなすための特別なチーム、運命共同体。
今ならそう思える。
その答えを彼女がどう受け止めるかはわからない。
受け止められなかったら、受け止められなかった、それだけの...
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