#author("2018-06-16T16:30:42+09:00","default:sesuna","sesuna") [[DAYS]] 与えられた数学の課題を抱えて、みなそれぞれの場所に散っていった。 教室に残っているのは、この場で片づけてしまおうとする者、帰ろうと準備をする者、行く先を決めかねている者だ。 行く先が決まっている者はすでに教室を抜け、それぞれのやりたいことをやっている頃合いだろう。 外から流れ込んでくるがやに耳を傾けながら坂下カシスは教科書とノートを見ていた。予習、復習を繰り返していれば、溺れられないことはない、と人なりの努力をしている。やろうと思えば、アンドロイド用のライブラリをインストールして丸暗記、なんてこともできる。 ただ、それでは学校に来た意味が薄れてしまうのでその手は使わない。 「慣れてないのよね、こういうの」 ペンを置いてぼやく。与えられた課題をただ、ひたすら解く、というのはどうもしょうにあわない。当たっていれば満足感や達成感はあるが目的に設定するには弱い。だからといって、数学が必要な何かのため、というと、特にはないと気が付いた。 普段は強い目的があり、それに方法がついてくるやり方で、今のような方法だけを先に知る方法は新鮮であった。うまく、紐づけばよい目的に、動機になるだろう、と坂下は考える。 そういえば、育ての親である坂下 命は研究者だった。何かを調べることを、突き詰めることが好きだといっていた。その対象はFSで、彼女の研究は対FS戦に大きく役立ったと聞いている。そして、彼女のとことん調べたい要求が自分を助けたことも、育てたことも知っている。 この場合は方法と目的がぐちゃぐちゃになっているので参考にならないが、学ぶことへの熱意と技量が備わると歴史に名を遺したり、歴史そのものに新しい流れを創ったりもする例にはなるだろう。 思考が脱線したのを感じた坂下は伸びをして深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。今はこの課題を片づけ、当面の目標はやりたいこと探しだと自分に言い聞かせて。