[[DAYS]]

*『復讐_B』 [#c8920c6f]

ビルの間の狭い通路を白の少女が逃げる。
その少女を追うのは装甲服をまとった男たちだ。
必死に走る少女の目の前、現れたのはビルの壁面だ。
見回しても三方は壁、行き止まり。
壁を背に白の少女は追っ手の男たちを怯えた表情で見た。
「逃がすか、FSめ!」
装甲服をまとった隊長と思しき男が叫ぶ。
白の少女が応じるよりも早く、鉛の玉が放たれた。
無数の弾は細い体の中で破壊の力を振りまきながら貫通した。
一瞬で肉の塊となった”それ”が湿った音をたててコンクリートの地面に転がった。
「確認します」
後ろに待機していた軽装甲の男が前に出る。
塊のそばに腰を下ろして、棒状のスキャナーをかざす。
青の光の線が肉の塊の表面を走る。
スキャンする男の視界に無傷のままのそれの右顔が見えた。
目があうと同時に開いているはずの瞳孔に光が戻った、ように見えた。
計測結果が出たと電子音が知らせる。
結果を自分に言い聞かせるように彼は、
「生体反応はありません。死んでます」
「そうか」
隊長各の男は確認するようにうなずいた。
「回収班に連絡してくれ。後は予定通りだ」
「了解」


その光景を上空から見下ろしている影があった。
背中には蝙蝠の羽にも似たそれを持つ、白の少女だ。
「これで何回目かしら?」
と呟いた声は夜の風に溶けて消える。
おそらく、彼らは納得しただろうが、ほかの人間は納得していないだろう。
だから、同じことはまた繰り返される。
「いつまで続くのかしら?」
問に答える存在はどこにもいない。