#author("2018-06-16T16:21:56+09:00","default:sesuna","sesuna")
[[DAYS]]

「あなたが言い出したことじゃない」
とカシス。
いや、確かにそうだ。
自分が言い出したことではあるが、ここまで手が早いとは思っていなかった。
気が付いたらすでに服は脱がされてしまった。
じりじりと後ろに下がると、ベッドのふちにぶつかった。
短く驚きの声を上げると、すでに彼女が上に乗っていた。
乗る、というよりは、またがる、というのが正しい。
日中のうっかり触れれば指先が切れてしまいそうな鋭さは消えていた。
整った顔立ち、すらっとした身体からは想像できない色気が感じられた。
彼女の匂いと熱が理性を溶かしているのがわかる。
それも意図的なものなのだろう。
彼女はこちらの胸板に両の手をのせて、上半身を倒した。
そして、流れるように唇を、重ねてきた。
そっと、触れるようなキスだった。
「……」
「おいしくなかった?」
味は、何だろう。
たぶん、さっき飲んだリンゴジュースの味だけじゃない。
果汁以外の甘さがあった。
もっと、飲みたい。
「もっとほしい」
そういうと、彼女は再び唇を重ねてきた。
今度は舌が唇を割って、口の中に侵入する。
負けまいと舌で応じると、水の滴るような音が二人の間で起こる。
構わずに続けていくと、彼女は上半身の体重をかけるように動いた。
押し返せるはずもなく、首と顔を使って、応戦する。
十数分ぐらいそうやったのだろうか。
キスだけなのに息はあがり、顔も上気している。
「結構、激しいのね」
「君こそ、だいぶじゃないか」
「でも、よかったのでしょう?」
「とても」
「では、続きをしましょう」
こちらの返事を待たずに彼女は動き出した。
キスの攻防を続けていく間に何度か隙を見て服を脱がそうとするが難しい。
ならば、と両腕を使って体を起こす。
右腕で彼女を抱きかかえる形だ。
これには彼女も驚いたようで、キスの攻防をやめて、短く驚きの声をあげた。
身体を起こすだけでも良かったのだが、もっと、声が聞きたくて、そのまま押し倒した。
「ふふ、意外と大胆ね」
「最初にキスをしはじめたのは誰だい?」
「最初に求めてきたのはあなたでしょう?」
互いに意地悪な質問をしている。
でも、それに悪意や敵意は感じない。
問いに対する答えはキスをすればわかる。
そっと唇を重ねて、ゆっくりと離した。
「こっちだけ服を脱がされているのはどうかな」
「いわないでそっと脱がしてくれれば、雰囲気あったのに、残念だわ」
「どうだろう。その服は脱がすのが難しそうだ。きっと、手間取る」
「正直なのも考えものね」
そういうと彼女は体を起こして、手を背中に回して、服のホックを外した。
ぷつん、と音がした。
「ジッパーを下してくれる?」
「ああ」
言われた通り、ジッパーを下していくと、その間から白く透き通る肌が見えてきた。
薄暗い明かりのなかでも輝いて見える。
傷つけないようゆっくりと、下ろしていく。
最後まで下ろし切ると、自然に彼女の着ていた服は流れるように落ちた。
服が卵の殻のように周りに広がる。
何かの芸術作品のようだった。
「気に入った?」
彼女の問いに自分が見入っていたことに気づいた。
「とても、きれいだよ」
「ふふ、ありがとう。では、下着を脱がしてもらおうかしら」
「繋がりがおかしい」
「私に脱がさせるの、これ以上?」
そういう場面ではないな、と納得してブラジャーのホックに手を伸ばす。
どうやってやれば脱がせるのだろうか。
ホックでひっかけているのだから、左右にずらせば外れるだろう。
そう推測して手を動かす。
推測通りにホックは動いて外れた。
ブラジャーは落ちず、彼女の胸を守っている。
両の手で彼女がカップを抑えているからだ。
「肌をさらけ出すの、勇気がいるのよ」
「ここまで言っておいてそれかい」
「恥じらいがなかったら、ただの作業じゃない」
「違いない」
そういいながら手は下着に伸びていた。
彼女はそれを拒まない。
むしろ、脱がしやすいよう体をこちらに向けて、左手で支えながら体を浮かした。
サイドに左右からつかんで下に動かすと、肌の上を布が滑っていく。
なんの抵抗もなく、するりと脱がせられた。
「今度は、私の番ね」
応じる暇もなく、こちらの下着の脱がされてしまった。
間接照明が体のなだらからな線を浮かび上がらせる。
こういうの芸術的というのだろう。
芸術といって差支えはない。
自分が知っている絵の中でも最も、美しいものだと思った。
見入るなというのは難しい注文だった。
彼女の妖しい光を宿した目と目があって、動きが止まる。
まるで思考が見透かされたかのような、飲み込まれてしまったようだった。
「動かないなら、私から行くわ」
彼女のなすがままに倒される。
身体を起こそうにも彼女は先とは比べ物にならないほど激しい口づけをしてきた。
しびれるような感覚に意識が飛びそうになった。
こんなことがあるのか、と驚く思考を電流にもにた快楽が引き裂いていく。
「ちょ、と待って」
ようやく、上半身ごと彼女を離して、言葉が出た。
「よく、なかったのかしら?」
「とてもよかった。じゃなくて、何もお返しできない」
正直な感想をいう。
「じゃあ、今度はあなたがそうして」
言外に気持ちよくして、という言葉が読めた。
ゆっくりうなずいて今度は彼女に覆いかぶさるようにして、キスを重ねる。
最初はされた動きを再現するだけであったが、彼女の声や体の震えからを見ているうちに良い箇所が見えてきた。
そこを重点的に攻めると、彼女の体は大きく震えた。
数秒間の震えのあと、荒い呼吸を繰り返しながらこう言った。
「上手、ね」
はじめてでうまいわけがない、という言葉を飲み込み、
「ありがとう」
と返した。
肌を重ねながらキスをするだけで、こんなに満足感が得られるとは思っていなかった。
「どうかしたの?」
内心を見透かされたような気がして、唇を重ねて離す。
ふふ、と微笑を浮かべたのを見て、今度は唇をむさぼる。
ん、と甘い声が漏れたのが聞こえた。
その声を聞きたくて、舌を動かす。
舌の動きにあわせ、甘い声が漏れる。
目を開くと頬を赤く染めた彼女が見えた。
きれいだ、と思っていると彼女の瞼がゆっくりと開いた。
普段は鋭さを感じる瞳も今はうるんでいる。
何か言おうとしたがそれは抱き寄せられてできなかった。
同じように抱き返して体を密着させる。
体温と肌の感触が、彼女の存在が全身で感じられる。
しばらくして、下腹部に別の感触が出てきた。
身体を上下にスライドさせると、
「んっ」
彼女は甘い声を漏らした。
「濡れてるよ」
「誰のせいかしら……。それにあなただって」
いわれて自分の中心が大きく、硬くなっていることに気が付いた。
今まで忘れていたのが不思議なぐらいだ。
「ねえ」
甘い声で彼女は耳元で囁く。
脳がとろけそうだ。
「いれて」
うなずくことも忘れて、上半身を起こす。
彼女の茂みは朝露に濡れているように、間接照明の光で輝いていた。
「あまり、見ないで」
小さな声がした。
「きれいだ」
「恥ずかしいわ」
そういいながらも彼女は腰の位置を動かして、いれやすいようにしてくれた。
茂みにゆっくりと身体の中心をいれる。
先端がぬるりとした感触に包まれると同時に彼女の体は震えた。
「痛かった?」
「気持ちよかったのよ」
そして、彼女はまた、抱きしめてきた。
予想しない動きに体がそのまま、彼女の上に落ちる。
落ちる動きは全身で起こり、自分の中心も彼女の中心に吸い込まれていった。
熱いぬめりを感じ、思わず声をあげそうになるのをこらえる。
「あなたのかわいい声が聞きたかったのだけど……残念だわ」
いたずらっぽい笑みを浮かべて彼女は言う。
「そういういたずらをするのはどうかと思うな」
反撃のつもりで腰を動かそうとして、まったく動かせないことに気が付いた。
そう、初めてなのだから当然だ。
「私に聞かないでね」
「聞いても教えてくれないだろう」
「さっきのキスと同じように覚えていけばいいの」
それは一理ある。
下半身の筋肉に意識を集中しながら、中心が交わるように体を動かす。
動かすたびに彼女は甘い声を漏らし、身体を震わせた。
普段から想像できない姿に興奮を覚える。
「慣れてきた、ようね」
途切れ途切れに彼女は言う。
「腰の使い方、君だって覚えているだろう」
「ええ、あなたのことをもっと、感じたいから」
その言葉に自分の中心がさらに熱く、硬くなったのがわかった。
「ん、また、大きく……っ」
返す言葉が思い浮かばないまま、腰を動かす。
彼女は悲鳴に近い声をあげ、左手で口を押えた。
しかし、右手はこちらの背中にあてられていて、離すつもりはまったくないらしかった。
「も、もう、限界、だから」
「俺も」
短く返してラストスパートをかける。
彼女の中心の締め付けがきつくなってきた。
破裂音にも似た音と湿り気のある音が聞こえる。
それが腰の動きを加速させ――そして、二人同時に体を大きく震わせて、絶頂を迎えた。
快楽の波がひくと、全力疾走したかのような疲労感と満足感が押し寄せてきた。
彼女も同じらしく、荒い呼吸をしていた。
しばらくして、
「ようやく、かわいい声が聞けたわ」
と呟いた。
覚えがなく戸惑う俺を見て彼女は微笑んだ。