[[DAYS]] * 『ヒトといる理由』 [#q4d4d7ed] 白の少女は黒の少女のベッドに横たわりながら、黒の少女が液晶ディスプレイに向かっている姿を眺めていた。 今は波に乗っているらしく、両手の指を使って軽やかにキーを叩いている。 時折、変換で止まったり、エンターキーを叩いた後、少し考えるために止まったりもする。 こういう時は静かにしていたほうが良いだろう、と白の少女は持ってきた小説に視線を落とす。 物語はちょうど、街に広まっているウィルスの感染ルートを突き止めるところに差し掛かっていた。 「ねぇ」 作業の方は一段落ついたのだろうか。 黒の少女が話しかけてくる。 ページ番号を覚えてから白の少女は小説を閉じて、 「何?」 「どうして、人と一緒にいるの?」 「そう言えば、話してはいなかったわね」 「うん。種族や生い立ちは聞いたけど、人と一緒にいる理由は聞いてないの」 黒の少女の言葉に白の少女はそうね、と頷いてから身体を起こす。 「話を聞いた限りだと人に復讐してもおかしくないし……」 「そう?」 「だって、住処を追われて、半殺しにされてるのよ」 「理解できない?」 黒の少女はこくっと頷いた。 「私はこうやって生きている。それにあの星だって私がいただけで私有物ではないわ。それが復讐しない理由」 白の少女は一呼吸置いて、 「あの戦いはヒトか私のどちらかに理解があれば回避できたのよ」 「でも、もしもはないわ」 「その通りよ。だから、私はヒトを、ヒトと意思を通わせる方法を知りたいの」 「わたしといるのもその為?」 「それは、違うわ」 微笑んで、 「楽しいからよ」