DAYS

『記念日』

田辺の視線の向こう、仮設の演説台でアンドロイドの少女が長い挨拶をしている。

惑星開拓の記念日であり、終戦記念日でもある。

自分たちは様々なものと引き替えにこの場にいることを忘れないで欲しい。

概要はそんなところだった。

開拓に最初から携わっている彼女らにとって、今日という日は特別なのだろう。

演説台に立つ少女の奥の空には黒い機体が6機ほど並んでいる。

護衛に来ているX-2XS 10th~15thだ。

武装した兵士よりもずっと、抑止力になりそうだ。

挨拶が終わったところで、式は開拓史の放映に移っていく。

周りを見れば大人や老人が子どもに何か話をしているのが目立つ。

実体験を話しているのだろう。

前の方を見れば、挨拶をしていた少女が演説台から降りて、談笑をはじめた。

まわりにいるのは開拓に携わった第1世代のアンドロイドだろうか。

「私たちの知らないことだ」

右隣にいたエリスが口を開いた。

「そうだな」

さらにそのエリスの右隣にいた透も、

「いろいろあったんだね」

と口を挟んできた。

「大まかな歴史なら聞いていたが、細かいことになるとさっぱりだ」

「歴史として知るのと、体験するのでは大きな隔たりがある」

「えーっと、やってみないとわからないってこと?」

「やってみた方がよくわかるって考えた方が良いかも知れないね」

さらに透の右隣にいる父親も続いた。

母親の方は静かに映像を見ているが、父と娘のやりとりも把握しているようだ。

実家の両親を思い出し、うちではない光景だな、と一騎は思う。

それにしても不思議な繋がりだ。

何せ、始まりはあのエリスが始まりなのだから。