答えの形

先ほどまで接近戦特化のFSを捉えていたはずの視界が砂埃の空を全面に映している。

接近戦特化のFSで足止めし、仲間もろとも射撃特化のFSが自分を砲撃したのだ、と把握するまで数秒の時間を要した。

どうやら、その砲撃を行ったFSは他のアンドロイドによって撃破されたようだった。

身体の状況は悪く、左足が太ももの中ほどから先、左腕も肘から先が綺麗に吹き飛ばされている。

傷口からは赤い液体ナノマシンが溢れては零れ続けていた。

どうしようかな、と彼女は問う。

この傷口を放置すれば、43秒後には冷却能力が低下し、ジェネレータやAIが緊急停止するだろう。

全身のナノマシンを統御するMBSも止まれば、この身体は文字通り崩壊するはずだ。

此処の状況を切り抜けたところで、また、この場所に送り出されて得体の知れない化け物と戦うだけだ。

なら、このまま崩壊しまうのも悪くない。

答えを出すと同時、思考の加圧を解き目を閉じて時間が経つのを待つ。

"それで良いの?"

もう一人の自分が問う。

"……"

そして、一度は出した答えを考え直す。

"それが本音なの?"

再び問われ、目を開ける。

見えるのは赤い砂に染められた赤い空だ。

空から視線を身体の左にずらして、

「……止まってる」

思わず放った言葉の通り、傷口は塞がっている。

終わりを望んでいたはずなのに……本当はそうじゃなかったんだ。

"どうしたいの?"

三度目の問いだ。

問いには言葉で応じず、身体を起こし、黒の羽を展開することで応じる。

"まだ、戦うの?"

"それが此処に在るということならば"

答えると同時、彼女の足元の周囲が円状、下方には半球状に消失する。

ジェネレータの出力がある領域に達した。

物質の再構成可能な領域だ。

迷わず失われた部位の再生を実行、必要な時間は一瞬だ。

行くよ、と呟き彼女は地面を蹴った。