DAYS

FSは絶滅した、とされているがFSはまだ存在していると信じている人々もいる。
実際はこうやって私は生きている。
ただ、表向き絶滅した扱いにしたのはそのほうがスムーズにことが進むと考えたから。
考えた通り、アルファ星系の瑠璃星FSの生きる惑星から人間の生きる惑星になった。
それで終わるのならよかったのだけど、そうもいかなかった。
FSと人類が戦った影響が半世紀以上経った今、予想もしない形で現れた。
FSを神として崇め、人類と戦うことを正義とするヒトたちだ。
崇めたり、モンスターパニック映画のモンスターとして登場するのは別に構わない。
しかし、私が考えとは違うことを私の考えとして好き放題にやる口実にするのは気に入らない。
「あなたはどう思う?」
横でカラオケの選曲をしているアルギズに尋ねる。
彼女はFSとの戦いでブレインタイプを倒し、その戦いを終わらせた英雄的な存在だ。
簡単に言うと、私を倒した。
「そうですね。表だって動くのは悪手でしょう」
「余計な混乱を起こすべきではないと思うわ」
「だから、暗躍するのが一番いいです。構成員に紛れて通報するのが無難です」
「できるけど、ヒトにとって恐怖ではないかしら」
「当人がいるところで適当なこと言っているのだとわかったら、それはとても怖いでしょうね」
アルギズは微笑みながら言った。
「いっそのこと、そういう噂で崩壊してくれないかしら」
「彼らはこう言いますよ。それはFSの真の意思に背いたからだ、だとか」
「真の意思に沿って動いたことないのよね、彼ら」
「ちなみに真の意思は何ですか?」
「今は一曲歌いたいわ」
苦笑交じりにアルギズはリモコンを私の前に置いた。
私は曲を探しながら、
「私が、FSが生きていると宣言する頃合いなのかもしれないわ」
「混乱が起きますよ」
「そうね」
混乱が起きるのは不本意だ。
そうならないように伏せていたのだから。
しかし、時間が解決するのを待つには限界があるのも事実だ。
「混乱を減らすよう準備をしましょう」
「準備ね。……破壊的な行動を起こすヒトたちを止める、というのはいい手だわ」
ヒトに敵対する意思はない、共存するつもりだと示すにはよい方法。
自作自演だと疑われる可能性があるけれど。
「では、そういう風にしましょう」
アルギズは微笑みながら頷いた。
私が曲の予約ボタンを押してから、ふと、思い出したように、
「結構、大事な話なんですけど、軽いノリで決めてしまいましたね」
「場末の水族館のほうがよかった?」
「これはこれでありです。悪だくみ感があっていいです」
ちらっと彼女のほうを見ると微笑んだまま。
こういうタイプが一番怖いのよね。