DAYS

カメラで外の様子を伺うと、シアーはタコ足を広げて波に揺られていた。
いつ呼びもどそうかと、誠司は考えていたが問題が起きるまでは何もしなくて良い、という結論に至った。
ヘッドセットでシアーに話しかけると、
「ここの海も気持ちいいよ」
と返ってきた。
海ができてから1世紀経つかどうかだと言うのに面白いものだ。
生態系も急速に発展しつつある。
だからこそ、潜水艇が潜り調査をし、バックアップに誠司とシアーがいる。
何もないなら海水浴に来たようなものだ。
こちらの潜水艇の動作確認は済んでいる。
他の星の海でもいつも通りの仕事ができる。
誠司にはその確信があった。
シアーに聞けばそう言う予感がする、と返ってくるだろう、と考えているとアラートが鳴った。
「こちら、海洋大学所属シークローラー、船体に異常が」
ぶつ、と通信とテレメトリが途切れた。
クリティカルな問題が起きたに違いなかった。
シアーを呼ぶと声は上から降ってきた。
すでにパイロットスーツに身を包んでいる。
「船体が破壊された可能性がある。急いで潜るぞ」
「うん」
バックシートに座るとシアーは、てきぱきとパネルを操作し、情報収集をはじめる。
「最後に通信してきた場所はここ。水深1万4300メートル……?」
「潜れるさ。俺たちなら」
「うん。いつも通り、ね」
「そういうことだ。ディープブルー、ベルト着用」
制御コンピュータが2人の体をベルトで固定する。
密閉されたことを確認すると、誠司は宣言する
「垂直に降下する。行くぞ」
流線型の美しい船体が青い海に消えて行く。
彼らは知らない。
海底に何がいるかも。
それが何を求めているかも。
深海の長い一日がはじまろうとしていた。