スマートフォンがアラームを鳴らす。
男はゆっくりと目を開けるとスマートフォンを握り、アラームを止める。
リモコンに持ち帰ると部屋の照明をつける。
「……」
「おはようございます」
「おはよう。もしかして、ずっと、そこにいたのか」
「はい」
死神を自称する少女はソファに座って本を読んでいた。
手元に照明はないから暗闇の中でページをめくり続けていたことになる。
「暗闇の中でも読めるのか」
「目はいいですから」
とニコニコしながら少女は応じる。
「ほう」
「何か作りましょうか」
ベッドから体を起こして、
「気持ちだけ、いただいておこう」
「普通に作れますよ」
不満そうな顔をする少女の前を通り過ぎて冷蔵庫をあける。
タッパーに入った料理を見せて、
「既に作ってあるんだな、これが」
「あっためますよ」
「電子レンジの使い方、わかるのか」
「わかります、大丈夫です」
「わかった。頼むよ」
「はい」
笑顔になる少女を見て、いったいどちらの魂のポイントを高めているのだろうか、と彼は疑問に思った。
具体的な数字は彼女にしかわからないので考えても仕方がない。
彼はインスタントコーヒーの粉をすくいカップに入れながら、誰かと挨拶をかわすだけでも気分が違うものだ、と感じた。
「コーヒー飲むか?」
「コーヒーだけで十分ですよ」
「腹は減ってないか」
「一人前でしょう?」
「まぁ、そうだが」
「あとでいただきますのでおかまいなく」
「食べたらでていってもらおうと思ったのだがなぁ」
「そうはいきませんよ」
とてもいい笑顔で言う少女に男はコーヒーを差し出して、
「そうかい。なら、ゆっくりしていけ」