Feathery Instrument

Fine Lagusaz

2話 おはよう

スマートフォンがアラームを鳴らす。
男はゆっくりと目を開けるとスマートフォンを握り、アラームを止める。
リモコンに持ち帰ると部屋の照明をつける。
「……」
「おはようございます」
「おはよう。もしかして、ずっと、そこにいたのか」
「はい」
死神を自称する少女はソファに座って本を読んでいた。
手元に照明はないから暗闇の中でページをめくり続けていたことになる。
「暗闇の中でも読めるのか」
「目はいいですから」
とニコニコしながら少女は応じる。
「ほう」
「何か作りましょうか」
ベッドから体を起こして、
「気持ちだけ、いただいておこう」
「普通に作れますよ」
不満そうな顔をする少女の前を通り過ぎて冷蔵庫をあける。
タッパーに入った料理を見せて、
「既に作ってあるんだな、これが」
「あっためますよ」
「電子レンジの使い方、わかるのか」
「わかります、大丈夫です」
「わかった。頼むよ」
「はい」
笑顔になる少女を見て、いったいどちらの魂のポイントを高めているのだろうか、と彼は疑問に思った。
具体的な数字は彼女にしかわからないので考えても仕方がない。
彼はインスタントコーヒーの粉をすくいカップに入れながら、誰かと挨拶をかわすだけでも気分が違うものだ、と感じた。
「コーヒー飲むか?」
「コーヒーだけで十分ですよ」
「腹は減ってないか」
「一人前でしょう?」
「まぁ、そうだが」
「あとでいただきますのでおかまいなく」
「食べたらでていってもらおうと思ったのだがなぁ」
「そうはいきませんよ」
とてもいい笑顔で言う少女に男はコーヒーを差し出して、
「そうかい。なら、ゆっくりしていけ」

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