DAYS

 年末年始は急ぎの仕事が入って、予定が大きく崩れたが、予定らしい予定もないのでアルギズとアズの二人は気にしてもいなかった。

「平日にずれてくれて助かりました」
「確かに」

大晦日から三が日は人で溢れていた参道も境内も今は二人だけだ。

「そもそもどこから人がやってくるのだか」

提灯に書かれているのは個人の名前が圧倒的に多い。個人の店名も企業の名前もない。

「なかなか、揃って動くこともないですから」
「それが夏祭りと初詣か」

小さいが造りのしっかりした本殿にたどり着くと二人は会話をやめる。
 普段の生活では出番がなくなった五円玉を投げ入れ、アルギズが鈴を鳴らすと、二人はほぼ同じリズムでお辞儀二回、拍手二回、お辞儀一回を行った。
 たっぷり数秒、願ってからアズは顔を上げた。右横のアルギズはまだ祈っている。

「お待たせしました」
「たいして待ってないよ」

穏やかな日差しがある参道は冬なのに暖かい。アズは歩きながら、風がないことに気が付いた。

「何を願ったんだい?」
「世界が平和でありますように」
「僕は皆が健康でありますように」
「もっと、具体的な願いをすると思っていました」

アルギズの横顔をちらっと見て、

「何を願うと思ったんだい?」
「いいデバイスが出ますように、とか」
「いいデバイスが出るには健康でいてもらわないと困る」

我ながらこじつけだとアズは思った。

「健康を犠牲にして作られたデバイスを買っても嬉しくはないですよね」

アズは頷いて、アルギズに聞いてみる。

「よくある願いですよ」
「そうだけど、君は少し違うだろう」

 世界を平和にするために動ける能力を持っている存在がいうと重みが違う。

「君の場合は、当事者としての宣言しているように聞こえるよ」
「それなら、アズも当事者としての自覚を持ってくださいね」
「君の副業というか本業を手伝っているのだった」

 参道を抜けた先、川を挟んで向こう側の木々が揺れている。どうやら風が強いようだ。
 アズはコートの襟を立て、手袋をした。
 参道が終わり、道路に出ると冷たい風が吹き抜ける。

「世間の風は冷たいか」
「工夫次第で温かく過ごせますよ」
「襟を立てるとか?」
「手を繋ぐとか」

 アルギズが伸ばしてきた手をアズは握る。

「手袋越しなのが残念ですね」

 それもそうか、とアズは右手の手袋を外してコートのポケットにしまう。
 頬にあたる風は冷たく、ポケットから手を出したくない、とわずかに思ったが、すぐに手を出してアルギズの手を握る。

「ポケットの中より温かい」
「さて、次はどこへ行きましょうか」
「ひとまず買い物かな」