[[PSO2]] 砂埃が舞う中、僕らは機甲種を求めて走っていた。~ 分布に偏りがあるらしく、出現のタイミングはばらばらだ。~ それでも数は倒せているようで、ポイントは確実に増えていた。~ ふと、隣を行くキンドルが足を止めてあるものを指差した。~ 機関砲だ。~ 最近になってアークスが援護のために設置し始めたもので、不定期に弾薬の補給やメンテナンスが行われているそうだ。~ しかし、設置場所がいい加減で岩が射線上に入り死角がある場合もあって、チーム内では撃つと楽しいもの扱いだ。~ 「撃ってみます?」~ 銃についての知識も心得もないのに撃つ気にはなれなかった。~ 「素人が扱うものではないだろう」~ 「使い方なら教えますから」~ 「フムン」~ キンドルの射撃の腕は確かだ。~ そういう人物に教われるのは幸いといえる。~ 僕は考えを改めてキンドルに教えてほしいとお願いした。~ 「はいっ!」~ 照準はハンドルで行い、倒した方向に応じて方向を変える。~ ハンドルの親指の部分に安全装置つきのトリガーがあり、解除してから弾けば射撃する。~ 自動照準はない。~ 機関砲の操作は非常に単純かつ明快だ。~ 「火力は高いので楽しいですよ」~ とキンドルは僕の横で嬉しそうに説明を続ける。~ 「味方にあてないように気をつけてくださいね」~ 一瞬、前後の文脈があってないように感じ、キンドルの横顔を見て、切り離して考えることにする。~ 「トリガーの安全装置は親指で弾いて押すんです」~ 安全装置は透明なカバーで、トリガーに覆いかぶさっていた。~ 「こうやって……」~ キンドルの手がハンドルに伸びる。~ グローブで隠れて見えないが綺麗な指だろう、と思考が現実から外れた。~ キンドルの指が僕の手に触れて――僕の思考は復帰した。~ 「すまない」~ 短く謝って手を引く。~ 横を見ればキンドルが顔を真赤にして口をパクパクとさせている。~ 「キンドル」~ 名を呼ぶ。~ 「は、はいっ」~ 僕より現実に帰るには時間がかかりそうだった。~ 幸い、周囲に敵の影はない。~ 敵を撃ち倒している時の厳しい眼差しは何処へ行ったのか、とキンドルの顔を眺めながら思う。~ 「……安全装置の解除の方法、でしたね」~ 帰ってきたようだ。~ 内心でおかえり、と呟きつつ、~ 「そうだ」~ といつもの調子で応じる。~ 既にハンドルからは手を退けてある。~ 彼女は改めてハンドルに手を伸ばし、ぱちっと指で安全装置を弾き、トリガーを押した。~ 快音とともに弾が前に飛んでいく。~ 「こうやって使うんです」~ 安全装置を下ろしてキンドルは言った。~ 「フムン」~ 習って安全装置を指で弾き、トリガーを押す。~ 先と同じように快音を引き連れて弾が前に向かって飛ぶ。~ 「なるほど、使い方はわかった」~ 「それは良かったです」~ 嬉しそうな彼女の笑顔を見ながら、彼女が撃っているほうが似合う、と考えた。~ 僕は給弾に徹していよう。~