Feathery Instrument

Fine Lagusaz

えーあい

宇宙船の主機関を失った彼らは偶然、近くに存在した小惑星に不時着した。
調査の結果、不時着した地域には鉱物が、少し離れた場所には酸素を多く含んだ岩石が多く存在することがわかった。
助けが来るまで彼らはここで暮らすことにした。
私は設計者が意図した機能と違う機能を求められたが、使用可能なリソースをすべて注ぎ込んで彼らのバックアップを行った。
そして、彼らは小惑星での生活を安定させることに成功した。
その時のことはよく覚えている。
資源が余っているという理由でアバターまで作らされたからだ。
まぶたはやや下がり気味で眠たそうなアバターだ。
人間の感情には疎い私をよく表している分身だった。
頑張り屋さんだからもっと元気そうなイメージを持っていたのに、など好き勝手に評価されたのも覚えている。
本当、好き勝手にやっていた。
彼らが死ぬまで続くだろう、と推測していた。
その日は突然にやってきた。
採掘プラントのドリルが可燃性の液体で満たされた洞窟を掘り抜いたのだ。
ドリルを停止した時点で既に爆発と崩落が起こりプラントはそこにいた彼らを灰に還してしまった。
可燃性の液体は飛び散り、彼らの根城にも降りかかった。
私のリソースは火災対応に消費された。
彼らの一人が「表層にある区画をパージしよう」と提案した。
この根城は二層構造になっている。
既に液体の噴出は止まっていたが、第1層の多くが炎に包まれ、消火能力を超えつつあった。
このまま、延焼すれば第2層も炎に包まれるだろう。
第2層には私と、彼らの子供が眠る人工子宮がある。
彼らの作業はずっと、バックアップしてきたが、今回のパージ作業は私の知っている中でもっともスムーズに進んだ作業だった。
そして、大仕事とともに彼らは宇宙に消えた。
私は被害状況の確認という理由で宇宙を見上げていた。
が、すぐにメインのリソースは工場機械の制御に割り当て、復旧にとりかかる。
与えられた役割は果たすのが役目だ、とそう考えていたのだ。

——喧騒に負けてリソースを目の前に向ける。
半目になったところで、元気の塊のような子供相手に通じるわけもない。
無茶な要望は多かったと記憶しているが、この親代わりになれという要望は最大級のものだった。
親子揃って手がかかる人たちだ。

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