Feathery Instrument

Fine Lagusaz

第四章「夢」

・・・・・・。 ぴたん。 ・・・・・・。 何処? 暗闇に水の落ちる音だけが響く。 ゆっくりと瞼を開くとまた暗闇だけが広がっていた。 昨日見た夢と同じ。 また同じように青色の影が浮かんでいた。 「ウンディーネ・・・?」 でも返ってこない。 膝を両腕で抱えるように浮かんでいた。 薄く透き通った殻のようなものがウンディーネを包んでいる。 まるで卵の殻だ。 気がつくとまわりの景色が見えてきた。 底は暗く何も見えなくて天井は太陽の光できらきら輝いている。 正面に見えるウンディーネは動かなかった。 眠っているように見える。 微かに胸の当たりが光っているのに気づいた。 確か・・・ウィルの一次元刀が当たったところ。 手応えは無かったって言っていた。 傷は実際にはあった、どうして。 ゆっくりと両足を動かしそばに寄ろうとする。 身体がゆっくりとでも確実に前に進む。 殻のようなものに手を触れる。 感触が無いまま通ってしまい慌てて引っ込めた。 また恐る恐る手を伸ばし身体に触れそうなところで止めた。 「痛そう・・・」 思わず口からそんな言葉が漏れた。 自分で戦っておいて間が抜けているかも知れない。 ただの偽善かも知れない。 「少しでも・・・あなたの傷が癒えますように・・・」 ヒールの呪文を唱える。 彼女の表情が微かに変わる。 大晶霊には痛みとかそういう感覚は無い、そんな話がある。 例え痛まなくても傷は傷。 身体は痛くなくても「心」というものは痛いかも知れない。 精神と物質の間を行き来する者なのだから。 傷が塞がるか塞がらないかのところでウンディーネと目が合った。 「あ・・・」 「!」 ウンディーネが驚くような表情をした、気がする。 優しく微笑まれどうしようか悩む。 「先ほどは・・・すみませんでした」 自分ながらなんて事言っているんだ、心の中で苦笑した。

「気にすることはありません。・・・ここはあなたのいるべき世界ではありません。あるべき所に帰るのです」 身体が勝手に浮き上がりあっという間にウンディーネが小さくなる。 水面に浮かび出た。 ただ何も無い青空だけが広がっていた。 瞬きをした。 ほんの一瞬だけ暗闇が広がりウィルの顔が正面にあった。 「おはよう、レイル」 「・・・夢?」 「寝ぼけてる?」 「ん、あ、いえ・・・少しだけ」 体を起こしながら言った。 「今日はここからでてレイルのお兄さんに会いに行くんだから」 「そうですね。今日も頑張りましょう」

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