『訓練風景その1』

正面のモニターには各部隊の戦況が映し出されていた。
AからZまでの26の小隊が戦場になっている小都市に展開している様子がわかる。
各隊員の位置からラインが集中線を描いてアルファベットに伸びている。
アルファベットの横に複数行で小隊の稼働率などが数値になっていた。
敵が近くにいるはずなの状況で何処も戦闘中の表示に変わっていない。
誰もがおかしいと思った次の瞬間、異変は起こった。
26の小隊のうち半分が一瞬にしてモニターから消えたのだ。

「くそ、どうなってるんだ?」
「通信を聞く限りだと民間人に紛れて……」
会話する彼らの前を非武装の人間が立っている。
10代後半の少年だ。
「すぐにシェルターに避難するんだ。この付近だと……」
男の説明を聞かず、少年は二人の前に立って
「ゆっくり近づいてきて」
少年の唇の両端がかすかにあがり始める
「ほほえむと同時に―」
次の瞬間、Y隊はモニターから消えた。

「自分の能力を信じるのは悪くないわ」
モニターを眺めながらカシスはつぶやく。
「でも、信じすぎるのは問題ね」
彼らアンドロイドのセンサーは優秀だ。
相手が武装か非武装かの見分けぐらい簡単につく。
が、これがこの場合の仇になるのだ。
「身体の構成でも、特性が同じとは限らないわ。たとえば」
ボタンを操作して一息、
「こうやって爆発したりね」
モニターからF隊の表示が消える。
その様子を眺めながらハガラズは苦笑するしかなかった。