『朝』

田辺は光を感じて目を覚ました。

時計を壁にかけてある時計の針は10時を指している。

「起きたか」

横向きに寝ていたエリスが問いかけてくる。

「ああ、おはよう」

「人間の修復能力は高いのか」

「若いうちはこんなところだろう」

自分の言葉に苦笑いしつつ、田辺は身体を起こす。

布団の一枚下は当然、裸だ。

そして、田辺は昨晩、エリスと寝たことを思い出した。

「服なら枕の隣だ」

エリスの言葉通り、枕の隣にたたんでおいてあった。

田辺の記憶では乱雑に脱ぎ捨てて終わっていた。

おそらく、エリスが畳んだのだろう。

そのエリスの服は床に畳んでおいてあった。

田辺が眠っている間に服を畳んでいる様子は想像すると何かおかしい。

「終わりなのか」

「続きがしたいのなら夜だ」

「了解」

何処か満足そうなエリスの表情。

これは今夜も耐久レースか、と田辺は覚悟をしつつ服を着ていく。

後ろで衣擦れの音、エリスも服を着ているようだ。

エリスより先に着終えると、田辺は台所に向かう。

「コーヒーをいれるのか?」

「そうだ。お前も飲むか?」

「お願いする」

手際よくコーヒーを入れて、エリスに差し出す。

「ありがとう」

「インスタントだから味は保障できないがね」

「他にも方法があるのか」

「ああ。俺は面倒だからあまり知らない」

「そうか」

「まずいか?」

「喫茶店のコーヒーと比較すると劣るが、時間の面ではこのコーヒーが優れている」

「なるほど」

「これはこういうものだ、と解釈すればまずくはない」

「お前らしいフォローだ。よし、午後は出かけよう」

「何処に行くのだ」

「買い物だ。不足しているものを買い足す」

「理解した」

「お前も来るか」

田辺の問いにエリスは笑顔で答えた。

「当然だ」