DAYS

『日々は他愛もなく』

「今年の紅葉はかなり遅くなるそうですよ」
横を歩く少年に少女は言った。
「12月、だっけ。冬だね」
「そうでしょうね。山の方に行けば、早いうちから見られるでしょうか」
「休みが取れるなら、それも悪くないね」
「そうですね」
「……とは言っても、休みは絶望的だけど」
少年の言葉に少女が頷いた。
「こうやって、時間が取れるだけ恵まれているのかも知れません」
「確かにそうだ」
苦笑いをして少年は答える。
「拘束時間が長くても私は大丈夫ですけど、アズは……」
「無理はしてないよ。仮眠もするし、寝るときは寝てるのは君も知ってるだろう?」
「そうですが不規則な生活は身体に良くありません」
「たまの休みぐらいはゆっくり休むことにするよ」
「そうしてください」
「……雨、か」
少女が手のひらを前に伸ばすと、冷たいものがあたった。
「降って来ちゃいましたね」
言い終わる前に雨脚が一気に強くなり、アスファルトが黒く濡れる。
「そこに地下街の入り口があるよ。中に入ろう」
二人揃って入り口に向かって走り出す。