DAYS

『初詣』

早朝の境内には彼と彼女の二人しかいなかった。
「さすがに誰もいないね」
とガウンのジャケットを着た少年が少女にいった。
「狙い通りです」
黒の服の少女が微笑みながら返した。
どこへ行っても初詣には変わりはないから、と彼らは近所の小さな神社を選んだ。
ここも元旦にはそれなりに行列があって、甘酒の配布などもやっていたらしい。
「静かなものだ」
言葉と一緒に漏れた息が白く固まって後ろに流れていく。
「気温と風の弱さもあってなおさらそう感じます」
木々に囲まれた石の階段を二人は登っていく。
歩いていて少女はあることに気付いた。
「足、揃ってますね」
「二人揃って右足、左足を出しているのか」
「はい」
そういって二人は笑った。
しばらくして、彼らは拝殿にたどり着いた。
二人は財布から五円玉を取り出して、賽銭箱へ同時に投げ込む。
拍手からお辞儀のタイミング、目を開くタイミングまで同じで、
「終わったよ」
「終わりました」
発言のタイミングまで同じだった。
「では、戻ろうか」
と二人は階段を降り始める。
「何をお願いしたんですか?」
「皆が幸せになろうと思えるように、さ。君はなんてお願いしたんだい?」
「身近な人たちの安全と幸せを。二人とも誰かのためにお願いしてるんですね」
「そうかな。回りまわって自分のことに繋がるよ」
「その理屈はずるいですよ。何にでもあてはまりますから」
と微笑みながら少女は言った。
「ずるいのは認める」
と少年も笑った。