DAYS

「その様子だと、ろくに食べてないでしょう?」
「あ、ああ、ここどれぐらいだったかな」
「冷蔵庫の中が空っぽ。ゴミ箱は膨れ上がってる」
「そうだ、コンビニ弁当で済ませてたんだった」
今日も軽く済ませるつもりで栄養入りのゼリーを買って来ていた。
「ちゃんと、食べないとダメよ」
と、カシスは台所に向かうとなれた手つきでエプロンをつけて、料理の支度を始めた。
「冷蔵庫、空なのに?」
「別にここの冷蔵庫が空でもうちの冷蔵庫にあればいいの」
そういうと彼女は虚空に手を突っ込み、豚バラ肉を取り出した。
「どこの英雄王だ」
「ただの宇宙怪獣よ。フレンドリーな」
フライパンを熱して、油を伸ばし、そこに肉を入れる。
焼ける匂いと音が台所から溢れ、俺の脳のスイッチを押した。
そうだ、俺は腹が減っていたのだ。
ちゃんとしたものが食べたい。
「お腹、鳴ってるわよ」
「まじで」
「うそよ。でも、鳴りそうでしょう?」
フライパンから目を離さずに彼女は続ける。
きっと、微笑んでいるのだろう。
いつものあの毒舌は何処へやら、だ。
「大抵のことはご飯食べて、しっかり眠れば落ち着くものなのよ」
「まぁ、そうだな。先に風呂に入って来ていいか?」
「わかしておいたから」
「悪い」
「感謝の言葉しか受け付けないわよ」
「ありがとう」
「ゆっくり浸かって来なさい」
湯船に浸かったの久しぶりだと、体の力を抜きながら気がついた。
今までシャワーで軽く済ませていた。
シャワーはちゃんと、温水だったろうか?
実は、ぬるいまま、あるいは冷たいままだったのではないか。
いやいや、まさかな、と考えながら風呂から上がる。
ダイニングキッチンに戻ると、焼肉と野菜サラダ、味噌汁、ご飯が並んでいた。
向かいの席でカシスはゆっくりと、お茶を飲んでいるようだった。
「ちょうどいいタイミングね」
「覗いていたのか?」
「覗かれたいの?」
「まさか」
席に座ると、焼肉のたれの香りが鼻をくすぐる。
いただきます、と箸を動かし始めるともう、止まらない。
食事の情報量に圧倒されている間に平らげてしまった。
うまい、感想はその一言で十分だった。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
「はぁ、助かる。生き返った」
「それは、良かったわ」
カシスは小首を傾げてから、
「彼女冥利につきる、というものかしら?」
俺はお茶でむせた。